2021 Fiscal Year Annual Research Report
低酸素微小環境を標的としたコルジセピン誘導体による口腔がん治療の検討
Project/Area Number |
21K10087
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
佐伯 万騎男 新潟大学, 医歯学系, 教授
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Project Period (FY) |
2021
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Keywords | Pontin / Reptin / 口腔癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん細胞は、低酸素環境下において低酸素誘導性因子であるHIF-1αが活性化し、低酸素応答遺伝子群の発現をはじめ、細胞内代謝経路のダイナミックな変化を生じる。本研究では、HIF-1α結合因子として知られるPontin/Reptinが、口腔がんの低酸素環境応答から悪性形質獲得に至る一連の過程にどのように関与するのか明らかにすることを目的とした。Pontin/Reptinは、それ自体がR2TPと呼ばれる複合体を形成し、分子シャペロンとしてDNA損傷修復、クロマチンリモデリング、テロメア形成などの様々な生命現象の制御機構に関与していることが知られている。我々は、まず、口腔扁平上皮癌におけるPontin/Reptinの性状を調べるため、ヒト口腔扁平上皮癌由来細胞株(HSC-3、HSC-4、SAS)を用いて、分子生物学、生化学、細胞生物学的解析を行った。その結果、Pontin/Reptinのノックダウンによって、すべての細胞株で著しい増殖の低下が見られ、さらに前駆リボソームRNA生合成の減少が観察された。PontinもしくはReptinの細胞内局在を検討したところ、通常条件に比べて、低酸素条件下では核小体への凝集の割合が上昇する傾向が見られた。このことから、Pontin/Reptinが低酸素シグナルによって、細胞内局在を変化させることで、リボソーム合成を調節している可能性が考えられた。さらに、新規Pontin/Reptin阻害剤であるコルジセピン誘導体(コルジセピン5'-トリホスファート)の生物学的活性について調べたところ、通常酸素条件に比べて低酸素条件下において口腔扁平上皮癌細胞の生存率の顕著な低下が見られた。この結果から、低酸素下において口腔扁平上皮癌細胞の悪性形質獲得にPontin/Reptinが大きく寄与していることが示唆された。今後、Pontin/Reptinの低酸素応答経路における詳細な作用機序について解明していく。
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