2023 Fiscal Year Annual Research Report
細胞外基質環境下における腫瘍特異的なCD73誘導低酸素応答性増殖機構の解明
Project/Area Number |
21K10109
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
丸山 智 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (30397161)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 達也 新潟大学, 医歯学系, 助教 (70634856)
山崎 学 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (10547516)
田沼 順一 新潟大学, 医歯学系, 教授 (20305139)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | hypoxia / HIF-1α / CD73 / Pleomorphic adenoma |
Outline of Annual Research Achievements |
1) ヒト腫瘍組織材料を用いた組織学的解析: ヒト良性および悪性唾液腺腫瘍手術材料パラフィンブロックから切片を作製し、免疫組織化学的に検討した。CD73免疫陽性のパターンは、大きく分けると3種類が確認できた。1つ目は腫瘍細胞自身が陽性となるパターンで、主に多形腺腫などの良性腫瘍で認められた。2つ目は、腫瘍細胞自身に代わって腫瘍間質細胞が陽性となるパターンで、主に腺様嚢胞癌など悪性腫瘍やリンパ球及び線維化等の間質誘導がみられる腫瘍に多く認められた。3つ目は、悪性腫瘍の中でも悪性化や個在性に浸潤する腫瘍細胞に特に陽性となるパターンであった。
2) 実験結果の評価と研究の総括: 細胞外基質が豊富な腫瘍間質の中で、腫瘍細胞自身がHIF活性化機構の標的分子の一つであるCD73を発現することで、腫瘍細胞の増殖や遊走能を亢進し、生存・維持している可能性が示された。CD73発現動態に関与する分子としてSTAT3について検討したが、CD73発現抑制下でSTAT3の発現抑制傾向がみられたものの、HIF-1αを介さない別の経路でのSTAT3発現上昇の可能性が示唆された。Proteome ProfilerTM 抗体アレイキット(R&D systems)を用いた細胞増殖関連液性因子の網羅的解析から、IP-10(別名 CXCL10)やAngiogeninなどいくつか候補分子を見い出した。ヒト腫瘍組織材料を用いた組織学的解析からは、腫瘍細胞以外にもリンパ球及び線維化等の間質誘導がみられる腫瘍では腫瘍細胞に変わって間質細胞からのCD73の供給の可能性も示唆された。次に、低酸素環境下においてHIF活性化によるCD73が制御する候補分子の候補の中から、液性因子であるケモカインCXCL10に焦点を当て、ECMを背景にCD73を介したCXCL10が腫瘍細胞の自己制御にどのような役割を果たしているのかを検討したい。
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