2021 Fiscal Year Research-status Report
成人期摂食機能不全をもたらす口腔機能発達期のストレスによる視床下部エピゲノム記憶
Project/Area Number |
21K10112
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
片桐 綾乃 大阪大学, 歯学研究科, 講師 (40731899)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 隆史 大阪大学, 歯学研究科, 教授 (50367520)
上野 祥夫 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (50880118)
毛利 育子 大阪大学, 連合小児発達学研究科, 准教授 (70399351)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 摂食機能不全 / 口腔機能発達 / 睡眠障害 / DOHaD |
Outline of Annual Research Achievements |
生後直後や発達期における環境要因(健康・栄養状態)は、成人になってからの健康に影響を及ぼす(Developmental Origins of Health and Disease: DOHaD)。本研究では、栄養環境及び摂食能力が劇的に変化する離乳期前後の内・外的ストレスが、神経系のエピジェネティック変化を惹起し、成人期以降も摂食関連機能(咀嚼能力や口腔内感覚)異常の残存をきたすと仮説を立てている。2021年度は、離乳期前後の内的ストレスとして、口腔顔面形態・機能の発達に関係する睡眠時無呼吸に着目し、成人期以降の摂食関連機能異常を呈するDOHaDモデルの確立を行った。 乳児期睡眠時無呼吸ラットは、乳児期の睡眠時間帯に間歇的低酸素負荷を行うことで作成した。P21(離乳)、P28、P35、P42、P49、P70(成人期)に、Grip force test、摂食テスト(ペレット、パスタ)、口腔粘膜への機械刺激に対する嫌悪反応閾値を解析した。乳児期睡眠時無呼吸群と対象群間で、体重増加およびGrip forceにおいて有意な差は認められなかった。一方、対象群と比較して、乳児期睡眠時無呼吸群における単位時間当たりのペレット摂食量およびパスタ摂食量は、P42以降に有意な低下を認めた。すなわち、乳児期睡眠時無呼吸群は、成人期の咀嚼能力(ペレット)および剪断能力(パスタ)の劣発達残存を呈すると考えられる。さらに、乳児期睡眠時無呼吸群では、口腔粘膜への機械刺激に対する嫌悪反応閾値が低下した。角膜への機械刺激に対する逃避閾値、足底への機械刺激に対する逃避閾値も測定したが、これらは乳児期睡眠時無呼吸群と対象群間で有意な違いは認められなかった。したがって、乳児期の睡眠時間帯間歇的低酸素負荷は、成人期以降の摂食関連機能異常を解明する有用なDOHaDモデルになると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度で、成人期以降の摂食関連機能異常の解明に有用なDOHaDモデルが完成した。咀嚼筋を支配する運動ニューロンの機能解析データも取得できており、本プロジェクトはおおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
確立した成人期以降の摂食関連機能異常を呈するDOHaDモデルについて、誌上発表の準備を進めている。成人期以降の摂食関連機能異常を呈するDOHaDモデルラットの咀嚼筋に逆行性神経トレーサーを注入し、咀嚼筋を支配する運動ニューロンを同定した。そこで2022年度は、同定した運動ニューロンおよび前運動ニューロンを含む脳領域の機能を電気生理学的に、また、エピジェネティック変化を免疫組織学的に解明する予定である。
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Causes of Carryover |
学会がオンライン開催となり、旅費を使用しなかったため、次年度使用額が生じた。2022年度に繰り越した研究費は、引き続き学会参加費として使用する予定である。
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