2022 Fiscal Year Research-status Report
神経ペプチドCGRPは口腔癌の骨破壊を制御する新たな標的となり得るか?
Project/Area Number |
21K10113
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
吉岡 徳枝 岡山大学, 大学病院, 講師 (50362984)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | CGRP / 癌骨微小環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は知覚神経由来の神経ペプチドであるCGRPが直接的あるいは間接的に癌細胞の増殖に与える影響を明らかにすることならびにCGRPが癌骨微小環境において癌細胞をとりまく細胞群(骨細胞、破骨細胞、血管内皮細胞、骨髄間質細胞など)に与える影響を明らかにすることである。これまでに、in vitroの実験で以下のことを確認している。1)口腔細胞株(HSC2,SAS)をCGRPあるいはCGRP拮抗阻害薬CGRP8-37の存在下で培養し、HSC2、SASともにCGRPによって細胞増殖は促進し、CGRP8-37添加により細胞増殖は抑制された。このことからCGRPは口腔癌細胞(HSC2, SAS)の増殖に直接的に作用していることが示唆される。2)樹立知覚神経細胞株F11をHCl添加にして作製した酸性環境で培養し、細胞内へのCa2+の流入を測定したところ、F11の興奮が惹起された。このことから、酸性環境は知覚神経興奮を誘発する。3)血管内皮細胞HUVECを用いてtube formation assayを行い、branching point、tube length、Netsを測定し、F11培養上清がpositive controlとして使用したVEGFと同等に強力にHUVECの管腔形成を誘導することを確認した。このことは、知覚神経から放出されるCGRPが血管新生を介して間接的に口腔癌細胞の増殖を誘導する可能性を示唆している。4)初代培養知覚神経細胞DRGにHSC-2およびSASの培養上清を添加し培養し、Calcein-AMで蛍光ラベルして可視化したところ、DRGの軸索延長が誘導されることを確認した。このことは口腔癌細胞が知覚神経の軸索延長を促進することを示唆している。以上の結果から、酸性環境は知覚神経を活性化させ、癌性疼痛を惹起する可能性が考えられる。また、知覚神経末梢から放出されるCGRPは血管新生を介して間接的に癌細胞の増殖を誘導する、あるいはCGRP受容体を介して直接的に癌細胞の増殖を促進する可能性があることが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度はCGRP阻害薬の口腔癌骨浸潤モデルに対する治療効果の検討として、前年度実行できなかった動物実験も行う予定であったが、まだ着手できておらず遅れ気味である。そのかわりとしてin vitroの実験はすすめており、これまでに知覚神経が酸性環境において神経興奮が誘発されることや、知覚神経がCGRPの産生を介して間接的にHUVECの管腔形成を促進すること、ならびに口腔癌細胞が知覚神経の軸索延長を促進することを確認している。現在もCGRPが癌骨微小環境において癌細胞をとりまく細胞群(骨芽細胞,破骨細胞,血管内皮細胞など)に与える影響に関して,in vitroの実験を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は動物実験を行う。ヌードマウスを用いて脛骨近位端骨髄内に口腔癌細胞HSCを移植して骨破壊モデルを作製する。CGRP受容体アンタゴニストMK-0974を投与し、治療効果について対照群と比較検討する。現在、骨のリモデリングに関与する骨芽細胞ならびに破骨細胞に対するCGRPの影響について、in vitroでは樹立骨芽細胞様細胞やマウス骨髄細胞などを使用し、CGRP存在、非存在下で培養し、各細胞の分化、形成、機能におけるCGRPの関与を調べていくが、解析などについては時間的制約もあるため学外に委託することも検討している。最終的には癌骨微小環境における癌細胞の増殖に関して、CGRPの直接的効果と間接的効果を明確にする。
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Causes of Carryover |
計上していた研究に関連する学会参加のための旅費は前年度同様にWEB参加であったため不要であったが、2023年度は学会もハイブリッドあるいは現地開催が多なり、学会へ現地参加し成果を報告する予定であり、旅費として予算の使用を考えている。また、動物実験が着手できておらず、動物実験にかかわる費用(実験動物の購入や抗体試薬などの購入)や得られた実験結果の解析委託に使用することを計画している。
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