2021 Fiscal Year Research-status Report
口腔細菌による代謝とエピゲノムのクロストークを介した口腔癌の治療抵抗性機序の解明
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21K10118
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
廣末 晃之 熊本大学, 病院, 助教 (00638182)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 口腔癌 / 口腔細菌叢 / 短鎖脂肪酸 / エピゲノム / 代謝 / 治療抵抗性 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は口腔細菌叢と口腔癌の臨床病理学的特徴との関連性についての解析を中心に行った。当科で保存していた口腔癌患者の唾液より細菌のDNAを抽出し、次世代シークエンサーを用いて16S rRNA遺伝子の塩基配列を解析し、口腔細菌叢の分析を行った。また、同唾液サンプルを用いて、短鎖脂肪酸をガスクロマトグラフィー・質量分析(GC-MS)にて測定した。現在、それらの解析結果と臨床病理学的因子との関連性の解析を行っている。 さらに本年は口腔癌の治療抵抗性に関与する代謝とエピゲノム変化を明らかにする目的で短鎖脂肪酸によるがん細胞の特性の変化の解析を行った。短鎖脂肪酸のうち、酪酸に着目し、酪酸にて口腔癌細胞株を刺激し、細胞増殖をMTT assayにて解析した。その結果、酪酸を高濃度の酪酸で刺激すると、細胞増殖が抑制されることが分かった。続いて、酪酸刺激による遊走能をwound healing assayにて、浸潤能をMatrigel Invasion Chamberを用いたcell invasion assayにて解析した。酪酸刺激での遊走能、浸潤能には明らかな変化は認めなかった。 次いで、エネルギー代謝との関連を想定し、低グルコース培地での酪酸刺激時の細胞特性の変化も解析した。その結果、低グルコース培地では高濃度の酪酸で刺激しても、細胞増殖の抑制は認めなかった。 現在、これらの細胞特性の変化に関与する因子を探索するため、酪酸刺激時の遺伝子発現変化やエピゲノム変化について解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は口腔細菌叢と口腔癌の臨床病理学的特徴との関連性を解明するための解析を行う予定としていたため、口腔癌患者の唾液より細菌のDNAを抽出し、次世代シークエンサーを用いて16S rRNA遺伝子の塩基配列を解析し、口腔細菌叢の分析を行った。また、口腔癌の治療抵抗性に関与する代謝とエピゲノム変化を明らかにする目的で、まずは短鎖脂肪酸のうち、酪酸に着目し、酪酸によるがん細胞の特性の変化を捉える解析を行うことができ、おおむね研究計画に応じた実験の遂行ができたと思われる。 しかし、現在、口腔細菌叢の分析結果と臨床病理学的因子との関連性の解析を行っているところであるため、今後さらに解析を重ね、口腔細菌叢と口腔癌の臨床病理学的特徴との関連性を解明したいと考えている。また、口腔癌の治療抵抗性に関与する代謝とエピゲノム変化の解析についても実施中の解析もあるため、今後更なる解析を進め、口腔細菌による代謝とエピゲノムのクロストークを介した口腔癌の治療抵抗性機序の解明していきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は口腔癌の治療抵抗性に関与する代謝とエピゲノム変化の解明するための解析を中心に行っていく予定である。酪酸による遺伝子発現変化およびエピゲノム変化については酪酸にて口腔癌細胞株を刺激し、RNA-seq法にて網羅的な遺伝子発現解析を行い、酪酸刺激下で変化した遺伝子の探索を行う。GO解析やパスウェイ解析等を用いることでどのような細胞特性に変化が生じているかを捉え、当科ですでに解析済みである口腔癌の高転移株、抗癌剤耐性株、放射線耐性株の遺伝子発現プロファイルのデータと比較し、治療抵抗性に関与する遺伝子を探索する。また、エピゲノム変化はヒストンH3の9番目および27番目リジンのアセチル化(H3K9Ac、H3K27Ac)に着目し、酪酸刺激下でのタンパク質の発現変化をウェスタンブロッド法にて解析する。またChIP-seq法にてゲノムワイドでのH3K9Ac、H3K27Acの変化を解析する。Homerというソフトウェアを使用して、上記ヒストン修飾解析のうち、H3K27AcのChIP-seqデータからスーパーエンハンサー領域を同定する。 また、酪酸による代謝システムの制御を明らかにするため、酪酸刺激下での解糖系や呼吸鎖などのエネルギー代謝の変化を細胞外フラックスアナライ ザーを用いて解析する。酪酸刺激下で解糖系の代謝物である乳酸の測定およびβ酸化の代謝物質であるアセチルCoAを測定し、エピゲノム変化との関連性を見出す。また、酪酸刺激下でメタボローム解析を行い、ダイナミックな代謝リプログラミングの変化を捉える。 上記の解析を進め、口腔細菌による代謝とエピゲノムのクロストークを介した口腔癌の治療抵抗性機序の解明していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
(理由) 細胞培養等に使用する消耗品やChIP解析に使用する抗体の納期が間に合わなかったため、次年度分へ繰り越した。 (使用計画) 細胞培養に使用する消耗品やChIP解析に使用する抗体を購入予定である。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Extracellular vesicles derived from radioresistant oral squamous cell carcinoma cells contribute to the acquisition of radioresistance via the miR-503-3p-BAK axis.2021
Author(s)
Keisuke Yamana, Junki Inoue, Ryoji Yoshida, Junki Sakata, Hikaru Nakashima, Hidetaka Arita, Sho Kawaguchi, Shunsuke Gohara, Yuka Nagao, Hisashi Takeshita, Manabu Maeshiro, Rin Liu, Yuichiro Matsuoka, Masatoshi Hirayama, Kenta Kawahara, Masashi Nagata, Akiyuki Hirosue, et al.
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Journal Title
Journal of Extracellular Vesicles
Volume: 10
Pages: e12169
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Re-evaluating the clinical significance of serum p53 antibody levels in patients with oral cancer in Japanese clinical practice.2021
Author(s)
Shunsuke Gohara, Ryoji Yoshida, Kenta Kawahara, Junki Sakata, Hidetaka Arita, Hikaru Nakashima, Sho Kawaguchi, Yuka Nagao, Keisuke Yamana, Masashi Nagata, Akiyuki Hirosue, Akimitsu Hiraki, Hideki Nakayama
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Journal Title
Molecular and clinical oncology
Volume: 15
Pages: 209
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Can MRI-derived depth of invasion predict nodal recurrence in oral tongue cancer?2021
Author(s)
Anri Minamitake, Ryuji Murakami, Fumi Sakamoto, Ryoji Yoshida, Junki Sakata, Akiyuki Hirosue, Kenta Kawahara K, KeisukeYamana, Hideki Nakayama, Ryo Toya, Shinya Shiraishi.
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Journal Title
Oral Radiology
Volume: 37
Pages: 641-646
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Role of serum amylase and salivary cytokines in oral complications during chemoradiotherapy2021
Author(s)
Kenta Kawahara, Akimitsu Hiraki, Hidetaka Arita, Hisashi Takeshita, Akiyuki Hirosue, Yuichiro Matsuoka Junki Sakata, Yuko Obayashi, Hikaru Nakashima, Mayumi Hirayama, Masashi Nagata, Ryoji Yoshida, Masanori Shinohara, Hideki Nakayama.
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Journal Title
Oral Diseases
Volume: 27
Pages: 1564-1571
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] miR-30a attenuates drug sensitivity to 5-FU by modulating cell proliferation possibly by downregulating cyclin E2 in oral squamous cell carcinoma.2021
Author(s)
Kenta Kawahara, Masashi Nagata, Ryoji Yoshida, Akiyuki Hirosue, Takuya Tanaka, Yuichiro Matsuoka, Hidetaka Arita, Hikaru Nakashima, Junki Sakata, KeisukeYamana, Sho Kawaguchi, Shunsuke Gohara, Yuka Nagao, Mayumi Hirayama, Nozomu Takahashi, Masatoshi Hirayama, Hideki Nakayama.
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Journal Title
Biochemistry and Biophysics Reports
Volume: 28
Pages: 101114
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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