2022 Fiscal Year Research-status Report
薬剤関連顎骨壊死の発症メカニズムの解明と新規予防法/治療法の開発
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21K10120
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
柳生 貴裕 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (00555550)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今田 光彦 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (10834054)
桐田 忠昭 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (70201465)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 薬剤関連顎骨壊死 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度の研究では、二つの重要なテーマに焦点を当てた。第一のテーマは、ラットを用いてbFGF含浸ハイドロキシプロピルセルロースのMRONJ(薬剤関連顎骨壊死)発症予防効果を明らかにすることであり、第二のテーマは、動物モデルを活用してMRONJの発症に関連する蛋白発現経路を詳細に解析することである。 第一のテーマについては、昨年度に収集した試料を活用して、CTスキャンと組織学的検索を行った。この実験ではbFGF含浸ハイドロキシプロピルセルロースを抜歯直後の抜歯窩に充填した結果、コントロール群と比較して、MRONJ発症を有意に抑制できることが実証された。さらに、実験群の観察から、新生骨形成や血管新生などのプロセスが改善していることが確認された。 第二のテーマについては、ラットに経静脈的にゾレドロン酸を投与し抜歯を行い、その後2週間で抜歯窩内の肉芽組織を回収し、回収された試料を用いて局所のゾレドロン酸濃度と蛋白発現の関連性を検討した。プロテオーム解析の結果、局所のゾレドロン酸濃度の上昇に伴い、約100種類の蛋白分子の変動が確認された。さらに、発現統計解析を通じて、オートファジー経路に特徴的な変化があることが判明した。これらの結果はゾレドロン酸が局所のオートファジー経路を修飾すること、およびオートファジー経路の変調がMRONJ発症に関与している可能性を示している。 次年度の研究の展望としては、MRONJリスク薬剤がオートファジー関連蛋白の発現にどのような影響を与えるのか、その影響の仕組みを明らかにするための研究を行う予定である。さらに、歯周病などの環境要因がMRONJ発症にどのような影響を与えるのかについても調査する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに我々は必要とされるサンプル数を確保した上で、包括的な動物実験を実施しました。これらの実験により、bFGF含浸ハイドロキシプロピルセルロースの有用性について、統計学的に信頼性の高いデータを収集することができました。 次に、ゾレドロン酸濃度と蛋白発現との間の相関性を調査し、これにより蛋白発現パターンと薬剤濃度との関連性を解明することができました。これは、MRONJの発症メカニズムを理解する上で、重要な知見を得ることができました。 当初の研究計画から一部逸脱する箇所もありますが、これらの変更は研究目標達成に向けて柔軟に対応した結果と考えます。全体としてみると、我々の研究は概ね順調に進展しており、これまでの進捗は期待通りであると考えています。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究について、私たちは二つの推進方策を設定しています。一つ目の主要な目標は、MRONJリスク薬剤がオートファジー関連蛋白の発現にどのような影響を与えるか、そのメカニズムを詳細に調査することです。この目標達成のために、我々は組織学的手法を活用し、これらの蛋白質の発現パターンを解析する予定です。このステップは、MRONJの発症メカニズムの解明に寄与し、最終的には効果的な治療法や予防法の開発に繋がる可能性を秘めています。 さらに、歯周病などの環境要因がMRONJ発症にどのような影響を与えるのかについても探索する予定です。この探索には、これまでに得られた実験結果との比較を通じた詳細な検証作業が含まれます。これらは、MRONJ発症の多要因性を考慮に入れたうえで、それぞれの要因がどのように相互作用し、影響を与えるのかを理解するための重要な研究となると考えています。 そして、最終的には、これまでの研究成果を統合し、MRONJ発症に影響を与えうる複数の要因について総合的な評価を行う予定です。この総合的な分析を通じて、MRONJの病態の解明に繋げることを目指しています。これらの取り組みにより、効果的なMRONJの予防法や治療法の開発に貢献できると考えています。
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Causes of Carryover |
当初の計画から一部の変更や調整を必要とした結果、次年度使用額が発生することとなりました。 次年度の予算については、変更した研究計画に従って適切に執行します。具体的にはMRONJリスク薬剤がオートファジー関連蛋白の発現にどのような影響を与えるのか、また、歯周病等の環境要因がMRONJの発症にどう影響するのか、という点に焦点を当てて研究を進める予定です。 さらに、次年度ではこれまでの研究結果を総合的に評価し、それぞれの要素がMRONJの発症にどのように影響を及ぼすのかを明らかにするための詳細な分析も行う予定です。
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Research Products
(2 results)