2022 Fiscal Year Research-status Report
生体イメージングとバイオインフォマティクスで解き明かす歯牙移動の制御
Project/Area Number |
21K10160
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
石原 嘉人 岡山大学, 歯学部, 客員研究員 (70549881)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中條 真奈 (橋本真奈) 岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (80824581)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 歯根膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
矯正歯科臨床で生じる歯の移動には、周囲の骨改造が必要となり、歯へのメカニカルストレスがそのプロセスの起点となる。歯根膜は歯へのメカニカルストレスを感受する組織である。歯の移動には歯根膜を介した骨代謝調節機構が必要であると考えられてきたが、そのメカニズムは依然解明されていない点が多い。本研究は、歯根膜のメカニカルストレスを介したCa2+シグナルの動態について生体周囲環境を残した生きた組織で解析し、バイオインフォマティクスで得られた骨代謝とCa2+シグナルに共通する変動因子と情報統合することで、臨床応用へ繋がる歯の移動制御メカニズムを明らかにすることを目的とする。 令和3年度の研究成果において、矯正治療患者の便宜抜去小臼歯から歯根膜組織を採取し、生細胞内Ca2+蛍光指示薬で組織内に存在する歯根膜細胞を生きた状態のまま 蛍光標識することに成功した。令和4年度の研究計画では、まず共焦点レーザー顕微鏡を用いた連続断層撮影によって3次元構築を行い、さらに経時的な時間情報を取得し、Ca2+の変動を4次元で捉えることを目標にしていた。その結果、短時間において立体構築した細胞の経時的な挙動を捉えることに成功したものの、長時間での変化を追うことは非常に困難を極めている。その大きな理由として、観察中の蛍光色素の退色が想定以上に大きい事と、観察組織の固定が安定しないためデータの定量化に問題が生じることが挙げられる。これらの問題点については、観察手法や時間軸の設定変更を検討している。また、3次元構築とタイムラプス観察を同時ではなく別々に行う事についても検討中である。今後は実験条件の最適化を図る一方で、上記 実験で得られた研究結果とMicroarrayによる網羅的な遺伝子発現解析および未知遺伝子を含むトランスクリプトーム解析へと発展させていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染状況に伴い、実験の進捗に支障を来した事がその一番の理由となる。この点については令和5年度より5類相当へ変更されるため、状況はかなり変化する事が予想される。また岡山大学歯学部棟の改修に際し、令和4年度から中心となって行っている実験室が使用出来なくなった事も大きく影響している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はヒト歯根膜組織の採取頻度を継続して増やすことで進捗状況の改善を図る。また、長時間での検討に技術上の障壁があるため、当初案で計画していたタイムラプスの設定をより短時間に変更することも視野に入れている。上記実験で得られたカルシウムシグナルの結果と並行してメカニカルストレスを負荷したヒト歯根膜からmRNAを抽出し、メカニカルストレス群ならびに対照群についてMicroarrayによる網羅的な遺伝子発現解析を行う。
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Causes of Carryover |
上述にもあるように、新型コロナウイルス感染状況の変化によって実験に支障が生じた。また主たる実験施設の移設があったため、実験の進捗が遅れている。これらに関連し当初予定していた実験および材料購入が遅延しているためである。今後は実験の進捗状況に応じて順次使用を予定している。
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