2021 Fiscal Year Research-status Report
歯の再生を目指したヒト乳歯歯髄幹細胞濃縮と機能解析
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21K10165
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
稲田 絵美 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 講師 (30448568)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 正宏 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, ゲノム医療研究部, 共同研究員 (30287099)
齊藤 一誠 朝日大学, 歯学部, 教授 (90404540)
野口 洋文 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50378733)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 乳歯歯髄幹細胞 / 細胞工学的手法 / アルカリホスファターゼ / 多能性幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らの過去の研究から「アルカリフォスファターゼ(ALP)高活性かつOCT3/4陽性の細胞(以下、ALP(+)/OCT3/4(+)と表記)は多能性幹細胞になり得る」と判断された。本研究では、細胞工学的手法によるHDDPC(ヒト乳歯由来歯髄細胞)由来ALP(+)/OCT3/4(+)安定株樹立を目指す。同細胞の特性(in vitro多分化能性、幹細胞マーカー発現等)を解析する一方、マウス胎仔の歯槽堤部由来細胞との共培養による組織再構成実験を行い、当該細胞の機能性(多能性幹細胞の特性を有する細胞か否か)を明らかにする。 研究計画では、① ALP陽性細胞(以下、HDDPC-ALP(+))の単離、② 細胞工学的手法を用いたHDDPC由来のALP(+)/OCT3/4(+)細胞(以下、HDDPC-ALP(+)/OCT3/4(+))の単離、③ 単離株の特性解析(遺伝子発現様式、多分化能性等)、④ 単離株の機能解析(マウス胎仔由来歯槽堤細胞との共培養(器官培養)による細胞再構成実験)の予定である。 2021年度には、限界希釈法でHDDPCをsingle cell化した後、増殖させる試みを行った結果、single cell化後の維持・増殖には細胞単独よりもMEF(マウス胎仔性細胞)との共培養が有利であり、cell lineによってはALP等の幹細胞特異的遺伝子の発現様式が異なっていた。vitro gelを使った器官培養による組織再構成実験では、マウス歯槽堤由来細胞、HDDPC、HDDPC由来iPS細胞ならびに同細胞から生じた胚様体の維持は、20日間程度は可能であること、しかし、iPS細胞/胚様体からの三胚葉性分化細胞への分化誘導は困難であることが判った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、限界希釈法にてHDDPCをsingle cell化した後、増殖させる試みを行った。その結果、single cell化はできるものの、その後の増殖は細胞によって差があること、一時的に増殖が達成されても、継続的な細胞拡大は困難であることが判った。この点を克服すべく、feeder細胞(細胞の増殖を補助する細胞)として汎用されるMEFを用い、その共培養によるsingle cellの増殖を試みた。結果、36個のsingle cellの増殖に成功した。しかし、全て1回目の継代で増殖が停止。そこで、これら細胞についてALP発現の有無を組織化学的に検索した。結果、ALP強発現は8%、ALP弱発現は22%、ALP無発現は70%だった。また、少ない細胞からのRNA回収、遺伝子発現解析が可能な全トランスクリプトーム増幅法(WTA)を用い、幹細胞特異的遺伝子の発現をRT-PCR法にて調べた。結果、cell lineによって遺伝子の発現様式が異なることが判った(論文作成中)。 一方、器官培養による組織再構成実験を実施した。マウス歯槽堤由来細胞とHDDPCをそれぞれvitro gelドロップに包入し、24-well plateに培地を1.5 mLずつ分注。µm孔径のisopore membrane filterを培地の上に浮かべ、前述の細胞含有ドロップをフィルター上に載せ、器官培養した。結果、両細胞とも20日間程度であれば維持・増殖できることが判った。また、HDDPC由来iPS細胞ならびに同細胞から形成した胚様体も同様に器官培養した。結果、いずれも20日間程度の維持は可能であったが、三胚葉性細胞への分化は認められなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は引き続き、HDDPCのsingle cell化からの維持・増殖に関する実験を継続し、増殖が達成されたcell lineについては細胞工学的手法によるHDDPC由来ALP(+)/OCT3/4(+)安定株樹立を目指す。特に、ALP(+)の細胞については、蛍光遺伝子でマーキングすべく、マウスOct-3/4 promoter + EGFP(緑蛍光蛋白)cDNA + poly(A)付加部位 + neomycin耐性遺伝子発現ユニット(neo)内蔵piggyBac (PB)系ベクターpT-dOEINを遺伝子導入する。その後、G418を含む培地で選別し、生じた薬剤耐性コロニーの内、緑蛍光を発するコロニー(OCT3/4遺伝子が活性化していると目される)を拾い、正常培地にて展開させる。最終的に、ALP(+)/OCT3/4(+)株を得る。この株に分化誘導剤を与え、神経や骨細胞等の分化細胞へin vitroで分化できるか、その多分化能性を検討する。一方、免疫染色やRT-PCR法にて他の幹細胞特異的マーカーSSEA-1、SSEA-3、SSEA-4、TRA-1-60、TRA-1-81、NANOG、SOX2、REX1の発現についても検討する。 一方、ALP(+)/OCT3/4(+)株とマウス胎仔歯槽堤部由来細胞とを共培養し、組織再構成実験を行う。同実験はマトリゲルコートしたディッシュでの培養、もしくは器官培養の両実験を検討しており、2021年度に引き続き、良好な培養条件の検討を継続する。
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Causes of Carryover |
2022年度は細胞への遺伝子導入実験の機会が増える見込みである。また、成果について学会発表、論文投稿を予定している。そのため、次年度使用額として翌年度分に助成金を持ち越した。持ち越した研究費は、細胞培養用試薬、分子生物学用酵素等の消耗品購入、学会参加費、出張費、論文校正、論文掲載費用として使用する予定である。
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