2021 Fiscal Year Research-status Report
歯の移動に伴うPiezoチャネルを介した疼痛発症機序の解明
Project/Area Number |
21K10168
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Research Institution | Kyushu Dental College |
Principal Investigator |
左合 美紗 九州歯科大学, 歯学部, 特別研修員 (40815825)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森井 葵 九州歯科大学, 歯学部, 医員 (20882046)
小野 堅太郎 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (40316154)
川元 龍夫 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (50323704)
黒石 加代子 (中尾加代子) 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (60468303)
水原 正博 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (60845402)
郡司掛 香織 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (90448811)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 歯科矯正 / 疼痛 / Piezoチャネル |
Outline of Annual Research Achievements |
歯科矯正治療中の患者の大半が歯の移動による疼痛を感じており、疼痛により治療を断念する患者も存在する。治療による疼痛は早急に解決するべき問題であるが、その詳細なメカニズムは明らかではない。治療時に歯周組織で生じる様々な変化がすべて矯正力という機械刺激に起因するにも関わらず、歯周組織においてどのような経路を介して機械刺激が受容され疼痛発症に寄与しているかは不明である。歯根膜細胞は機械刺激によりATPを細胞外に放出し、歯科矯正時の疼痛と骨リモデリングへの関与が指摘されているが、機械受容分子は特定されていない。侵害受容に関わるとされるイオンチャネルの中で、Piezoチャネルは機械感受性を持つことが知られている。本研究では、Piezoチャネルの機能及び発現を調べることでPiezoチャネルを介した歯の移動に伴う疼痛発症機序を解明することを目的とする。 令和3年度は、ヒト後根神経節、ヒト歯根膜線維芽細胞(HPdLF)および5名の患者から採取した歯根膜細胞を用い、Piezo1、Piezo2mRNA発現レベルをRT-qPCRにて検討した。Piezo1mRNAは神経系より歯根膜細胞系で高発現傾向にあり、Piezo2mRNAは神経系で発現が高かった。免疫染色によりHPdLFでのPiezo1とPiezo2のタンパク発現を調べたところ、両チャネルの免疫陽性を確認した。さらにCa2+イメージングにおいて、HPdLFにおけるPiezo1アゴニストYoda1投与後の反応を記録した。HPdLFへYoda1を添加し、24時間後での培養液中のATP濃度をルシフェリン-ルシフェラーゼ反応により測定した結果、Yoda1によりHPdLFの細胞内Ca2+濃度とATP放出が濃度依存性に増加した。これらのことより、Piezo1の活性化による細胞内Ca2+の上昇が細胞外ATP放出に寄与したと示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通りin vitro実験系により、ヒト歯根膜線維芽細胞においてPiezo1の活性化による細胞内Ca2+の上昇が細胞外ATP放出に寄与したと示唆された。 これらのことから、実験の進捗はおおむね順調に進展している、と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
新規開発した矯正力負荷システムで、2 gの分銅をウェルに浸漬し圧付与し、Piezoチャネル及びATP放出経路阻害薬の影響を検討する。また酸素供給量の評価のため、低酸素マーカーとして知られているHIF-1αについて免疫染色を行う予定としている。
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Causes of Carryover |
令和3年度は新型コロナの蔓延により、学会に参加しなかったため、旅費を使用しなかった。またin vivo実験の動物飼育費、管理費、試薬費等が予定よりも少なかった。よって、次年度使用額が生じた。 本年度も引き続き学会参加は困難である可能性が高いが研究は行える状況のため、前年度実行できなかったin vivo実験による解析を行うなど、未使用金を使用する予定である。
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