2021 Fiscal Year Research-status Report
Characterization of neuron-like cells differentiated from human dental pulp stem cells
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21K10172
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
白川 哲夫 日本大学, 歯学部, 教授 (00187527)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 抜去歯 / 歯髄幹細胞 / MECP2 / アポトーシス / Ki67 / SSEA-3 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト抜去歯から分離した歯髄組織について、20%ウシ胎児血清を添加したMEMαにてoutgrowth法により幹細胞を分離し、そののち間葉系幹細胞専用培地を用いて5%CO2、37℃で継代培養した。得られた細胞ストックについて、MECP2遺伝子に変異のある細胞群(Rett症候群女児由来)と変異のない正常細胞群(19歳健常女性由来)について、まず低接着表面3次元培養プレート(IWAKI)によりspheroid形成能を検討した。2種の細胞群ともに培養2日目以降でspheroidの形成を認めたが、その後3次元培養を継続すると両細胞群ともにアポトーシスが進行した。細胞間の接着は確認されず、プレートへの低接着環境での3次元培養は細胞間相互作用の検討には適していないことが示唆された。 続いて、通法による静置培養条件下で、細胞増殖ならびに幹細胞のマーカーをターゲットにした蛍光免疫染色を行い、各種マーカータンパクの局在と陽性細胞の割合を検討した。細胞増殖能のマーカーであるKi67については、細胞核内に局在を認め、健常者由来の細胞では93%がKi67陽性であったのに対し、Rett症候群患者由来の細胞ではKi67陽性細胞の割合は82%であり、MECP2の変異がKi67陽性細胞の比率に影響していることが示唆された。今後、その分子メカニズムについて研究を進める予定である。また、多能性幹細胞のマーカーであるSSEA-3については、弱いシグナルが主に核周囲の細胞質内および細胞表面に局在していたが、両細胞群で違いはみられなかった。また、間葉系幹細胞の代表的なマーカーであるSTRO-1については発現レベルが低く、両細胞群で発現パターンに違いは認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヒト歯髄由来幹細胞から神経系細胞への分化誘導を実現するにあたり、生体において歯髄腔内で間葉系幹細胞が比較的密に存在し、細胞同士が何らかの相互作用を行っていることを想定して、それに近い環境を低接着表面3次元培養プレート上で構築することを意図した実験をまず行った。3次元培養の期間を2日から7日に設定し、spheroid形成後に細胞活性、とくに増殖能を評価したが、3次元培養3日から7日にかけて増殖能は経日的に低下し、7日では表層を除くspheroidのほぼ全体でアポトーシスの進行を認めた。spheroid形成後に静置培養に移しても増殖能は回復しなかった。そのため、3次元培養による実験系の確立はヒト歯髄幹細胞については困難と判断し、研究アプローチを見直すこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
低接着表面3次元培養プレート上でspheroidを形成させる実験計画は中止とし、通常の静置培養条件下で、細胞表面のマーカー分子の発現をRett症候群女児由来の細胞と健常女性由来の細胞で比較する実験を計画している。現在、1クール目のアッセイを終了したところである。実験にはScienCell Research Lab. 社のGeneQuery Human Cell Surface Markers qPCR Arrayを用い、細胞表面に発現するマーカー分子88種についてメッセンジャーRNAレベルで相対的な発現量の測定を行っている。令和4年度はこのアッセイにより、まずRett症候群女児由来の細胞と健常女性由来の細胞で、どの細胞表面マーカー分子で発現量に違いがあるかを調べ、明らかな違いのある分子を特定したのち調節メカニズムを解明する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由: キャンペーンなどを利用し、当初の予定より物品費が安く抑えられたため。
使用計画: 特段の計画変更はなく、繰越金と令和4年度助成金を合わせて、 令和4年度の計画通りに 実験に係る消耗品の購入と謝金の支払いに使用する。
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