2022 Fiscal Year Research-status Report
Characterization of neuron-like cells differentiated from human dental pulp stem cells
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21K10172
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
白川 哲夫 日本大学, 歯学部, 教授 (00187527)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ヒト歯髄 / 間葉系幹細胞 / 細胞表面抗原 / CD69 / TNF-α / スフェロイド / 分化誘導 |
Outline of Annual Research Achievements |
レット症候群女児および健常女児の歯髄由来の間葉系幹細胞(MSCs)について、市販の間葉系幹細胞専用培地を用いて培養したのち、Gene Query Human Cell Surface Markers qPCR Array Kit を用いて細胞表面抗原を検索した。そののち、健常女児の抜去歯より採取した歯髄組織について、3%グリオキサール溶液で固定後、凍結組織切片を作成した。CD69ならびにCD4、CD8、CD103のいずれかについて免疫蛍光二重染色を行い、共発現の有無を検討した。続いて低接着表面三次元培養プレートにて、健常女児歯髄由来MSCsを培養し、細胞の活性ならびに増殖能を調べた。 Cell Surface Markers qPCR Array Kitにより、細胞表面抗原88種について、レット症候群女児由来のMSCsにおいて発現レベルの高い抗原を検索した。その結果、これまで歯髄由来MSCsで発現の報告のないCD69について、レット症候群女児由来MSCsのみに高い発現を確認した。そこでその制御機序を明らかにする目的でTNF-αによる刺激を行い、CD69の発現をリアルタイムPCR法で調べた。その結果、レット症候群女児および健常女児の歯髄由来MSCsでは、ともにTNF-α刺激によりCD69 mRNAが濃度依存的に増加することを確認した。また健常女児歯髄由来MSCsについての免疫蛍光二重染色で、CD69とCD4、CD8、CD103のいずれかが共発現している細胞の存在を確認したが、その数はわずかであった。 続いて、歯髄由来MSCsを最長で7日間静置培養し、神経細胞への分化誘導の前段階としてスフェロイド形成を試みた。しかし培養開始後2日から3日で100から1000個程度の細胞塊の形成を認めたものの、その後増殖は停止し、7日後に細胞塊内部の細胞がアポトーシスを起こしていることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
レット症候群女児および健常女児の歯髄由来の間葉系幹細胞(MSCs)について、MSCsでは過去に報告のない細胞表面抗原であるCD69の発現を確認した。CD69はリンパ球の早期活性化マーカーとして知られており、炎症性疾患との関わりが報告されているが、感染を起こしていないMSCsでどのような働きをしているのかは不明であり、その存在が神経細胞への分化誘導にどのように影響するかについて検討を要する。本研究では、まずCD69がごくわずかしか発現していない健常女児歯髄由来MSCsについて、神経細胞への分化誘導を目的とするスフェロイド形成を試みたが、歯髄由来MSCsは、間葉系幹細胞専用培地を用いて物理的にスフェロイド形成に適した条件で培養しても、7日後に大半がアポトーシスを生じることを確認した。したがって、歯髄由来MSCsから神経細胞への分化誘導には、低接着表面三次元培養プレートをまず使用してスフェロイドを形成させ、さらにニューロスフェアへと分化させるという方法は不適であることが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
歯髄由来MSCsから神経細胞への分化誘導を成功させるためには、低接着表面三次元培養プレートを使用する物理的なアプローチではなく、通常の培養ディッシュにてまず培養液の組成を神経細胞分化誘導専用にして静置培養する、あるいは培養液の組成の変更と低接着表面三次元培養プレートの使用を同時に行う、などが考えられる。培養液に付与する神経細胞分化誘導のための試薬は購入済みであり、令和5年度はそれらの実験を行う。
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Causes of Carryover |
一部の消耗品の購入個数について、当初計画していた使用量よりも少ない個数で実験が実施できたため次年度使用額が生じた。 令和4年度は当初の計画よりも進捗状況がやや遅延していたことから、令和5年度は実施すべき実験を当初の計画より増やす必要があり、研究費の使用額は予定よりも増える見込みである。
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Research Products
(2 results)