2021 Fiscal Year Research-status Report
障害児・者の歯科治療時におけるストレスモニターとしての自律神経活動の測定
Project/Area Number |
21K10200
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大島 昇平 北海道大学, 大学病院, 講師 (00374546)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉原 俊博 北海道大学, 歯学研究院, 准教授 (60261319)
高井 理人 北海道大学, 大学病院, 医員 (80825513)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | ストレス / 障害者 / 歯科治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯科治療はストレスを伴う。特に障害児・者はストレス脆弱性があり、歯科治療時のストレスにより、歯科治療恐怖症や全身的偶発症を引き起こす可能性がある。本研究は歯科治療時の生理的反応を測定し、歯科治療時のストレスを客観的に評価することを目的としている。今年度は重度心身障害者を対象に歯科治療中の生理的反応を測定した。測定した生理的反応は心電図測定と皮膚電位活動(EDA)、診療内容は歯ブラシによる清掃の後、超音波スケーラーにてスケーリング(歯石とり)を行った。心電図結果から心拍変動の周波数解析を行い、高周波成分(High Frequency>0.15 Hz:HF) および低周波成分(Low Frequency 0.05ー0.15 Hz: LF)に分解し解析を行った。この2つの成分に加えて,LFとHFのそれぞれの比であるLF/HFを含めた3つの指標と、時間領域解析であるR-R間隔の変動係数 (coefficient of variation of R-R intervals:R-R間隔の標準偏差/R-R間隔の平均値×100:CVRR)を算出し、生理的指標として評価を行った。 EDAは皮膚電位水準(Skin potential level:SPL)の測定し、変化が見られるものを反応ありとして評価を行った。 心拍変動解析では、安静時とスケーリングの比較ではLFとCVRRにと統計学程有意差が認められた。また、安静時と歯ブラシでの清掃の比較では統計学的有意差は認められなかった。EDAは歯ブラシでの清掃では16名中、SPL反応ありが2名、SPL反応なし14名であり、スケーリングでは16名中SPL反応あり3名、SPL反応あり3名であった。 以上によって重度心身障害者の歯科診療中の心拍変動解析とEDAによってストレスの評価ができる可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べたように、重度心身障害者を対象に心拍変動解析、皮膚電位活動の測定を行い、安静時と歯科診療中に変化がおこることが確認できており、現在、論文投稿準備中である。ウエラブルセンサーによる自宅での心電図の測定についても準備をすすめている。研究対象となる患者さんも、本研究に興味を示してくださる方が多数おり、研究の遂行も問題なくできている。以上から、今年度本研究は概ね順調に進行していると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は大学病院の歯科に受診した重度心身障害者を対象に測定を行なったが、今後は自閉スペクトラム症の患者さんも他対象に測定を進めていく。今後の課題としては、より普段の安静時での生理的指標の測定を行い、実際の歯科診療時に測定した生理的指標と比較を行いと考えている。そのため、ウエラブルセンサーを用いて、自宅での生理的指標の測定を行いたいと考えている。現在のところ、心電図の測定が可能なウエラブルセンサーを用いた測定を計画しており、測定のプロトコールを検討している段階である。また、現在のシステムでは心拍変動解析を1分間隔で行なっているが、PDASの評価やEDAの測定と比較する場合の心拍変動解析の適切な時間間隔は検討が必要と考えており、次年度の課題である。
|
Causes of Carryover |
今年度は新型コロナウイルス感染症のため、学会がオンラインで開催された。そのため、学会出席の旅費が不要になった。また、今年度は論文がまだアクセプトされていないため、論文投稿料が不要になった。データ解析のためのコンピュータも必要なスペックのものが当初想定していた金額より安価に購入できた。以上の理由により次年度使用額が生じた。心拍変動解析に使用するウエラブルセンサーが当初想定していたより、個数が必要になりそうなため、次年度使用額を使用して購入する予定である。また、当初計画になかったが、国際学会での成果発表を検討しており、旅費が必要になるため、次年度使用額を使用する予定である。
|