2022 Fiscal Year Research-status Report
顔面軟組織の死後変化が著しい遺体からの生前顔貌の推定法の確立
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21K10203
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 敏彦 東北大学, 歯学研究科, 准教授 (70261518)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小坂 萌 東北大学, 歯学研究科, 助教 (90706871)
波田野 悠夏 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (10907504)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 復顔 / 頭蓋 / 顔面形状 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,腐敗・焼損・乾燥など死後の時間経過により高度に変化した顔貌から,直接生前の顔貌を復元するための客観的方法を提供しようとするものである。具体的には生体の頭蓋の骨形状(A)とこれに対応する生体の軟部組織形状(C)の差分データ,また死後変化を遂げた遺体の頭蓋の骨形状(A’)と死後軟部組織形状(B)の差分データを集積する。A→Cの差分データに基づいてA’から遺体の生前軟部組織形状(C’)を推定し,これにより死後変化による顔貌(B)から生前の顔貌(C’)への関係式を導き出し,遺体の顔貌復元のための基本的データを提供しようとするものである。これまで,既にデータ取得済みのAとCとの関係性を精査すると共に,立体形状の解析手法である相同モデル化の工程およびプログラムのブラッシュアップを行ってきた。また機械学習によるA→C,A’→Bの推定の検討に着手している。更にこれまで撮影された死後CTの実データの提供を受け,本研究の対象となる死後変化を遂げた症例を抽出するため,死後変化のパターン分けの検討に着手した。年齢や体格など遺体の生前状態,腐敗による膨潤あるいはミイラ化等の乾燥による収縮,死亡後CT撮影を受けるまでの期間など,死後変化のパターンには非常に多くのケースが存在する他,実データには死後CT撮影を受ける際の顔面の変形などの二次的要因も加わっていることから,症例の選択基準や除外基準を再度検討しなければならないことが判明した。また顔面の軟組織厚を条件別に総合的に求めることが困難である可能性が示唆された一方で,筋組織,脂肪組織,腺組織などの組織レベルでの死後変化に関する先行研究が乏しいことから,差し当たっては検討対象を体組織レベルにまで絞り込み,死後変化を明らかにしていくこととした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在までの研究で,生体の骨形状と軟部組織形状の対応と軟部組織厚の評価は進んでおり,また生体・死体問わず,軟部組織厚の分析手法としての相同モデル化に関しては,用途に特化した分析用ソフトウェアのカスタマイズを行っている。現在は死後CTの実データを対象とした予備的解析が進行している。法医解剖前の死後CT撮影に特化したAi(オートプシー・イメージング)センターの担当者と打ち合わせを行った結果,Aiセンター側では本研究の対象ケースの選択や除外の判断は困難であることから,基準検討用データとして2022年に死後CT撮影を行った全症例に関して,それぞれのDICOMデータから3次元構築を行うとともに死亡時の状況の検討を行った。その結果,いわゆる新鮮症例については死後変化が少ないために本研究の対象からは除外することとする一方で,死後変化が進行した症例に関しては,死後の経過日数,死体が置かれていた状況,生前の体格等によって様々なケースがあることから,症例数を増やして分類基準を更に検討することとした。また死後CT撮影を行う際に,遺体の搬送時に用いる納体袋やビニールシートで顔面が圧迫され,二次的に変形を来しているケースが少なからずあることから,顔面の全範囲にわたって理想的条件で軟組織厚を計測できる場合が少ないことも判明した。このため,顔面領域において,筋・脂肪・耳下腺などの部位ごと・組織ごとに生じる死後変化の先行研究がないことから,一旦顔面軟部組織の総合的な厚さ変化に関する検討を保留し,組織レベルで死後変化を精査する方針に切り替えることにした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の作業ステップとして,遺体データを対象として,組織レベルでの死後変化の探索を積極的に進めていく。新たにエックス線画像解析のエキスパートや大学院生を研究協力者に加え,遺体データの取得と解析を積極的に進めていく。2021年以前の過去にさかのぼって死後CT撮影データの提供を受け,新鮮症例を除外したサンプルに関して軟部組織形状(B)を抽出していく作業をスピードアップしていく。この際,変化量に大きく影響することが予想される領域として,唾液腺,咀嚼筋ならびに皮下脂肪にターゲットを絞り,重点的に計測を行っていく。唾液腺については耳下腺・顎下腺・舌下腺の三大唾液腺,咀嚼筋は咬筋・側頭筋を主として,場合によっては深部にある外側・内側翼突筋も対象とする。皮下脂肪に関しては生体で厚みが少ない前頭部から鼻根部にかけての領域と,生体で厚みが多い頬部を代表的な部位として取り上げ,それぞれから数点を選択し,計測を行っていく。検討項目としては単純な線計測のほか,画像的な濃淡の均質性,腐敗等によるガス発生の状況も検討項目に含める。
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Causes of Carryover |
今年度に行ったデータ解析に関しては既存の機材を用いて遂行可能であったため,解析専用の機材を新たに購入する必要はなく,分析用ソフトウェアのサブスクリプション料金の他は消耗品程度の支出であった。また学会発表に関しても1回の出張で済み,他は出張を必要としない発表であったため,次年度への繰越額が発生した。翌年度分としてはデータ解析を依頼する学生への謝金支出や,分析用ソフトウェアのサブスクリプション料金,解析専用機材および新規ソフトウェアの導入が必要となるため,この購入に充てる予定である。また学会発表がオンサイト開催となる機会が増加するため,旅費支出の増加も予定している。
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Research Products
(5 results)