2021 Fiscal Year Research-status Report
真菌とウイルスによるサイトカインストームにおける非古典的インフラマソームの役割
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21K10233
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Research Institution | Ohu University |
Principal Investigator |
玉井 利代子 奥羽大学, 歯学部, 准教授 (90367566)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | Caspase-11 / ウイルス / 真菌 / インフラマソーム / TLR3 / TLR7 / Candida albicans / ザイモザン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、①ウイルス感染症と口腔カンジダ症などの内因感染症における caspase-11 の役割を明らかにして、② caspase-11 の発現を増強または抑制する薬剤の、易感染性宿主における有用性を検討し、高齢者社会における感染症に対する新たな予防法に応用することである。 本年度は、以下の結果を得られた。1.Dectin-1リガンドであるザイモザンまたはカードランによるマウスマクロファージ様細胞J774.1の前処理は、同細胞の poly(I:C) による IL-6, MCP-1, TNF-α およびインターフェロン (IFN)-β 産生を増加したが、イミキモドによるIFN-β産生は抑制した。2.SARS-CoV-2のSタンパクを発現させた擬似新型コロナウイルスは、ヒト肺胞基底上皮腺癌細胞 A549 の IL-8, MCP-1, IFN-β産生を誘導したが、J774.1 細胞による IL-6, MCP-1, TNF-α 産生は誘導しなかった。しかしながら、同ウイルスは、ザイモザンで前処理したJ774.1細胞のIL-6産生は誘導した。また、ザイモザンによる前処理は、A549細胞の擬似新型コロナウイルスによるIL-8とMCP-1産生を増加した。3.擬似新型コロナウイルスのデルタ株は、TLRシグナル伝達を抑制するDok3分子の発現を増強した。4.1 ug/ml ザイモザンは、J774.1 細胞のcaspase-11, NLRP3, プラス鎖 RNA を認識するRIG-Iの発現を増強した。5.ザイモザンまたはカードランは、 J774.1 細胞のN4BP1(RNA分解酵素)を分解した。N4BP1は、NF-kappaB 抑制因子であることから、上記1.の結果は、ザイモザンまたはカードラン前処理による N4BP1 の分解が関与することが考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通りの遺伝子組み換え体を入手した。すなわち、caspase-11欠損RAW細胞、ASC欠損RAW264細胞、および ASC と caspase-11 を発現する RAW-ASC 細胞を用いて、2022年度はRNAウイルスまたは真菌が引き起こすシグナル伝達における非古典的インフラマソームの役割について検討する。RNAウイルスのRNAは TLR3, TLR7, TLR8, RIG-I, MDA5, NLRP1 などの受容体に、エンベロープは TLR2 または TLR4 に認識されるが、真菌は TLR2, TLR4, dectin-1, dectin-2 などに認識される。TLR4シグナル伝達はMyD88依存経路およびTRIF依存経路で、 TLR3はMyD88非依存TRIF依存、TLR7はMyD88依存TRIF非依存で NF-kappaB を活性化して炎症性サイトカインの産生を誘導する。MyD88非依存TRIF依存経路では、caspase-8 が重要な役割を果たす。また、caspase-8 は caspase-1 または caspase-11 経由でインフラマソームを活性化する。一方、caspase-8 活性化によって抑制される、または caspase-8 活性化を抑制する RIPK3 によっても caspase-11 は活性化する(学会発表3)。Caspase-8 と上記受容体によるシグナル伝達経路の関係については数多くの論文で明らかにされているが、パターン認識受容体における caspase-11 の役割についての報告は乏しい。しかしながら、古典的インフラマソームの中心である caspase-1 は、DNAウイルスを認識する cGAS を分解してインターフェロン産生を抑制するので、caspase-11と病原体パターン認識受容体の関係について調べるのは意義がある。
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Strategy for Future Research Activity |
各種病原体関連分子パターン認識受容体のシグナル伝達における caspase-11 の役割を探るために、(1)caspase-11欠損細胞に擬似新型コロナウイルスを感染させて、下記1)-4)について野生株細胞と比較する。1)細胞表面または細胞内タンパク分子の発現変化:病原体関連分子パターン認識受容体や関連分子の発現をフローサイトメトリーまたはウエスタンブロットで検討する。2)活性酸素種(ROS)の検出:ウイルスが誘導する ROS 産生をジヒドロローダミン123とフローサイトメーターで検出する。3)サイトカイン産生:ウイルスが誘導する炎症性サイトカイン(IL-1, IL-6, IL-8 および TNF-α 等)またはインターフェロン(IFN-α または IFN-β)産生増減を調べる。4)転写因子:活性化して核内に移行した NF-κB, AP-1 等の活性化を ELISA またはウエスタンブロットで検討する。(2)擬似新型コロナウイルスで前処理した caspase-11 欠損細胞に Candida albicans, C. tropicalis, または C. glabrata を感染させて、上記1)-4)について野生株細胞と比較する。(3)上記 Candida spp. 3菌種の加熱死菌で前処理した caspase-11 欠損細胞に擬似新型コロナウイルスを感染させて、上記1)-4)について野生株細胞と比較する。
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Causes of Carryover |
遺伝子組み換え体作製には多額の費用がかかる。ゆえに、使用期限を考慮しながら慎重に新しい試薬を購入する。
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