2021 Fiscal Year Research-status Report
フッ化ジアミン銀とレーザーアブレーション法を併用した選択的う蝕除去法の開発
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21K10236
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
楠瀬 隆生 (桑田隆生) 日本大学, 松戸歯学部, 准教授 (10398852)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
布施 恵 (長井恵) 日本大学, 松戸歯学部, 准教授 (30343578)
岩井 啓寿 日本大学, 松戸歯学部, 講師 (10453888)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | レーザーアブレーション / 銀溶液 / フッ化ジアミン銀 / う蝕除去 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画では(1)銀溶液塗布う蝕部におけるfsレーザー照射効果の検証、と(2)銀溶液を用いたう蝕部検出の汎用性の検証、が2021年度の主要な課題である。これらについて以下にまとめる。 (1) 銀溶液塗布う蝕部におけるfsレーザー照射効果の検証 fsレーザー照射効果の検証は、【現在までの進捗状況】で述べる様に、照射実験が行なえず研究に遅れが出ている。そのため、照射実験用う歯試料の作成方法の再検討を行った。当初、象牙質う蝕部に直接銀溶液を塗布し、照射用試料とする予定であった。しかし不規則に起こるう蝕部では部位ごとに硬度や組成に大きな差があり、レーザー照射効果の定量的な効果の検証が困難になると予想された。そこで同一歯の健常歯質を銀溶液塗布部と未塗布部に分けた試料の作製を行った。同試料を用いた照射実験を行うことで硬度や組成の違いなどの影響と除去し、レーザー照射効果を精度よく検証できるものと期待できる。 (2)銀溶液を用いたう蝕部検出の汎用性の検証 銀溶液塗布前後のう蝕部の組成変化の検証は、銀溶液塗布によるう蝕検出の機序や安全性を理解する上で重要と考えられる。そこでフーリエ変換赤外線分光法(FTIR)による銀染色前後のう蝕部の組成分析を行った。銀染色前後でう歯切片の赤外吸収スペクトルを比較すると、染色後のう歯ではリン酸基由来と推定されるピーク強度が低下しており、う歯切片表面が脱灰された可能性が示された。う歯の銀染色ではリン酸銀などの形成が予想されたが、これまでのところ銀化合物由来と推定されるピークが確認できず、う蝕部では金属銀が生じている可能性が示された。これは銀溶液塗布により有害なリン酸銀の蓄積は生じないことを示しており、銀溶液塗布の安全性を示す結果と言える。加えて、【今後の研究の推進方策】に示す様に、レーザー照射条件を検討するための基礎情報ともなる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでのところ、銀溶液塗布う蝕部に対するfsレーザー照射効果の検証で遅れが出ている。レーザー照射実験は、日本大学理工学部内の電子線利用研究施設で実施予定であった。同施設には電子線形加速器由来の超短パルスレーザーである自由電子レーザー(FEL)が開発されており、本研究ではFELの照射効果を検証する予定であった。しかし、2020年度末に生じた加速器主要部(クライストロン電源)の故障、施設内ビームラインの追加工事、さらには夏季休暇中の理工学部キャンパス全体のメンテナンス停電などの影響により、電子線利用研究施設の利用者実験の受け入れが中止され、当初予定した2021年度前半の施設利用実験を断念せざるを得なかった。そのため2021年度は、先の研究実績の概要で述べた通り、照射用試料の再検討を行い、照射実験再開に向けた準備を進めた。 一方、銀溶液を用いたう蝕部検出の汎用性の検証については、先の研究実績の概要で述べた通り、FTIR測定による組成分析を行い一定の成果を上げている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、遅れが生じている銀溶液塗布う蝕部におけるfsレーザー照射効果の検証が急務となる。2021年度前半は利用実験が中止されていた電子線利用研究施設は、現在、順調に稼働している。そこでこれまでに実施できなかったFEL照射実験を可能な限り速やかに実施する予定である。一方、【研究実績の概要】に述べた様に、銀染色を施したう蝕部では金属銀の形成が推定されている。しかし、近赤外領域のレーザー光源であるFELを照射した場合、吸収波長の問題から金属銀(すなわち銀溶液を塗布したう蝕部)では十分な波長依存性が見られない可能性がある。そこで、有償貸出が行われている紫外線~可視光領域のfsレーザーを用いた照射実験も検討している。 また、銀溶液塗布前後のう蝕部の組成変化の検証では、金属銀が形成されている可能性があることから、FTIRによる測定よりX線回折法(XRD)による分析が適していると考えられる。そこでXRDを用いてより詳細な成分分析を行う。本来の研究計画に従い、エネルギー分散型X線分析装置付走査顕微鏡などを用いて、銀溶液塗布~レーザー照射後の歯質構造に生じる変化を検証する
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Causes of Carryover |
【現在までの進捗状況】に示した様に、当該年度は利用予定であった日本大学電子線研究施設での加速器の故障やメンテナンスの影響により、レーザー照射実験が実施できなかった。そのため、照射実験に関わる施設利用料や光学素子などの物品費が未使用となった。次年度はそれら実施できなかった研究を行う予定であり、レーザー照射実験に必要な研究施設利用料や光学素子などの物品費に充てる。現在のところ、前期6月から夏季休暇に集中して実験を実施することを検討している。なお、研究実施に必要な電子線研究施設への共同利用研究課題申請や日本大学量子科学研究所兼任所員への応募は既に済ませている。
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Research Products
(1 results)