2021 Fiscal Year Research-status Report
原因疾患にもとづいた要介護高齢者の低栄養予防プログラムの開発
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21K10251
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
野原 幹司 大阪大学, 歯学研究科, 准教授 (20346167)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松村 えりか 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (30816450)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 低栄養 / 嗅覚 / 味覚 / アルツハイマー型認知症 / 服薬数 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らの研究室では,これまで高齢者の食欲を改善する方法として味覚や嗅覚,嚥下機能の観点からのアプローチを行ってきた.これまでの研究から,要介護高齢者においては嗅覚や味覚は著しく低下しており,それらが食欲に影響している可能性が示されたものの,要介護高齢者はヘテロな疾患の集合であり,個々の患者のオーダーメイドの栄養改善プログラムを考えるには,疾患ごとの嗅覚・味覚・嚥下機能と食欲との関連を明らかにする必要がある.本研究では,要介護の原因で多い疾患における味覚・嗅覚機能,嚥下機能,服薬状況を調査し,その結果が食欲および栄養状態に及ぼす影響を明らかにすることを目的としている. 本年度は高齢者の変性疾患で最も多いとされるアルツハイマー型認知症の症例を対象に研究を行った.対象者は42名(FAST stage 1~6,平均年齢88.2±5.7歳)とし,調査項目は先行研究と同様に,嗅覚検査(OSIT-J),味覚検査(ソルセイブ),食欲(CNAQ),体格(BMI),服薬数とした.調査の結果,OSIT-J:1.2±1.5点(基準値 9以上),ソルセイブ:0.8±0.4(基準値 0.6以下),CNAQ:30.6±3.1点(基準値 29以上),BMI:21.2±3.3(基準値 22),服薬数:6.0±3.0剤であった.目的変数をCNAQおよびBMI,説明変数をOSIT-J,ソルセイブ,服薬数として重回帰分析を行ったところ,CNAQについてはR=0.25であり関連を認めた因子はなく,BMIについてはR=0.29でありOSIT-Jと弱い正の相関を認めた. 以上のことから,アルツハイマー型認知症においては著しい嗅覚低下が認められたものの,味覚低下は軽度であり,食欲や体格については基準値と同程度であった.また,味覚・嗅覚・服薬数は食欲に関連せず,嗅覚が体格に関連する可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究はヒトを対象とした調査研究であり,とくにヒトの中でも疾患を有する高齢者(要介護高齢者)を対象としている.そのような調査の性質上,主たるフィールドは病院や高齢者施設となる.2020年以来のCOVID-19感染症は,致死率の高い高齢者に対する感染対策が極めて重要であり,その流行期においては高齢者施設において外部からの来客を禁止するところが数多く出てきている.そのため,本研究においても,予定していた施設での調査が中止になったり,延期になったりすることがあった. その対策として,厳重な感染対策を行って調査する,緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の期間を避けて調査するなどを行ってきた.本研究の申請時から感染状況も考慮して研究計画を立てていたため,COVID-19の流行を繰り返した年度としてはそれなりの調査成果が得られたと思われるが,それでも当初の目標が十分に達成できたとはいいがたい.今後もCOVID-19感染症の流行はしばらく続くことが予想されるため,調査内容の再考(接触時間の短縮やマスク着用下での調査など)を行い,効率よく調査を進めていく予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
今後もCOVID-19感染症の流行はしばらく続くことが予想される.本研究は調査研究であるため,その流行の動向に進捗が大きく左右されかねない. 方策としては,感染対策の徹底(調査時にCOVID-19を持ち込まない,水平感染を防ぐ,など)を行い,調査許可が得られる施設を増やしていく.計画時に調査を行う予定であった病院や施設によっては,調査研究が一切禁止となったところも存在するため,調査許可が得られる施設を随時増やすよう努力していく予定である. 調査内容や方法についても再考し,接触時間の短縮,マスク着用下での調査,感染が落ち着いている時期に調査を行い流行期には解析・論文作成をおこなう,など,感染の動向を考慮した効率を重視した研究計画にしていく予定である. 現在得られたアルツハイマー型認知症を対象にしたデータについては,さらに被験者数を増やす必要があるが,他の専門家の意見を聞く意味も含めて,日本老年歯科医学会で学会発表を行う予定である.そこで得られた助言を加味して,被験者を増やして本年度中には英語論文を1篇作成できればと考えている.
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Causes of Carryover |
COVID-19感染症の流行のため,調査研究が十分に行えず,その分の経費が繰り越しとなった.また,研究成果の発表や結果に対する意見交換のために学会現地参加を予定していたが,そちらもCOVID-19感染症流行のためできなかった.その分が次年度使用額として生じた.感染症の流行が落ち着けば,それら予算は次年度に使用する予定である.
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