2023 Fiscal Year Research-status Report
Transcriptional disruption in craniofacial neural crest by administration of drugs at the early stage of pregnancy possibly causes the HFM-like craniofacial malformation in rat embryos.
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21K10261
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Research Institution | Ohu University |
Principal Investigator |
今井 元 奥羽大学, 歯学部, 准教授 (90291343)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 礼子 奥羽大学, 歯学部, 准教授 (90333723)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | バルプロ酸 / 頭部神経堤 / 上皮間葉転換 / 頭部神経堤細胞 / Hoxa2 / Sox9 / 軸索伸長 / 顎顔面骨格 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、頭部神経堤(NC)形成直前のSDラット胚にバルプロ酸(VPA)を単回投与することによって、『① 頭部神経堤の上皮間葉転換(EMT)が、どのように阻害されるのか。② 頭部神経堤細胞(NCC)の移動経路が、どのように攪乱されるのか。③脳神経の軸索ガイダンス因子(Sema3)が、どのように攪乱されるのか。④脳神経ニューロンの軸索伸長が、どのように攪乱されるのか。⑤ 顎顔面骨格に、どのような奇形を生じるのか。』などの解明を作業目標としている。①-④に関しては、①VPA投与により中脳-ロンボメア(R)1/2 NCにおいてHoxa2 mRNAの異所性発現とSox9 mRNAの発現の減少が検出され、EMTが阻害されていた。 さらに、②SNAI2陽性NCCの形成と移動が減少し、全胚培養系を用いたDiI標識細胞の追跡実験においても、中脳-R1/2 NCCは前頭鼻隆起(FNM)や第1鰓弓(Ba1)への移動が減少し、代償性にR4 NCCがFNMやBa1に移動していた。さらに、③Sema3の発現異常 と④三叉神経の軸索伸長の抑制が観察された。これらの結果は、頭部NC形成直前のVPAの単回投与は、中脳-R1/2のNCにおけるHoxa2、Sox9の発現異常を介して、中脳-R1/2のNCCの減少とR4のNCCの移動異常が起されることを示しており、これらの異常によって、三叉神経の軸索伸長の抑制が引き起されることを示唆していた。現在、上記の⑤の『上顎・下顎・舌骨・耳小骨などに、どのような奇形を生じるのか。』を解明するために、排卵時刻に個体差が殆ど生じないWistar-Imamichi (WI)ラットに系統を変え、頭部神経堤(NC)形成直前のWIラット胚にVPAを単回投与し、頭部NCCの形成と移動の撹乱した胚を胎齢12.5日、及び、20日で摘出し、顎顔面の原基と骨格の形態計測と解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
移動中の頭部神経堤細胞(CNCC)の有用なマーカーとして用いることができ、さらに、神経細胞やグリア細胞への分化運命の定まったCNCCのマーカーとしても有用であるSox10のホールマウント in situ ハイブリダイゼーション用mRNAプローブの作製に手間取ったため。
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Strategy for Future Research Activity |
作業目標①-④に関しては、既に、頭部神経堤(NC)形成直前のWistar-Imamichi (WI)ラット胚にVPA/salineを投与し、E9.5-E11.5の胎仔を摘出し、Hoxa2(後方化因子),Sox9(NCCのEMT因子),Sox10(EMT直後のNCCマーカー)のin situ ハイブリダイゼーション(WISH)を行っている。さらに、同様に薬物投与したE12.5の胎仔を摘出し、Sox10 WISHの結果に基づいて、成熟ニューロンマーカーの抗neurofilament抗体、あるいは、未熟ニューロンマーカーの抗β tubulin III 抗体を用いたE12ラット胚のホールマウント免疫染色 (WIHC)標本の詳細な観察を実施する予定である。 作業目標⑤の『上顎・下顎・舌骨・耳小骨の形成が、どのように攪乱されるのか。』に関しては、同様にVPAを投与したE12.5(軟骨形成の初期マーカー)のWIラット胎仔を摘出し、形態計測を行っており、顔面原基の形態計測と統計解析を行う。頭部NCCの形成と移動の撹乱を行った胚を妊娠20日目に摘出し、また、アルシアンブルー-アリザリンレッド染色をした透明化骨格標本を作成し、これらのサンプルの解析を進めている最中である。
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Causes of Carryover |
支出実績が約94万円なのは、年度内に納品完了している物品の購入先業者からの請求書が遅延し、所属研究機関の令和5年度の会計処理上、約50.5万円(プローブ作製用キット,各種抗体,顕微解剖セット他)が未払いとなったからであり、来年度の実際の使用予定額は、12万円程度である。したがって、来年度は、これまで購入した物品を用いて、VPAの移動前NCにおける影響(抗HistonH3,H4抗体)、成熟ニューロンマーカー(抗neurofilament抗体)、あるいは、未熟ニューロンマーカー(抗β tubulin III 抗体)などを用いたホールマウント免疫染色 (WIHC)標本の詳細な観察を実施する予定である為、その際に必要になる消耗品や論文の投稿費などに使用する予定である。
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