2021 Fiscal Year Research-status Report
呼吸器ウイルス感染に及ぼす口腔細菌の影響とその予防法確立に向けた基礎的研究
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21K10265
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
神尾 宜昌 日本大学, 歯学部, 准教授 (60546472)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 口腔細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
SARS-CoV-2は、特異的なプロテアーゼによりスパイクタンパク質がS1サブユニットとS2サブユニットに開裂することにより、感染性を獲得する。本年度は、口腔細菌が産生するプロテアーゼがSARS-CoV-2のスパイクタンパクを開裂させる能力があるのか検討した。リコンビナントSARS-CoV-2 全長スパイクタンパク質を、口腔細菌にて処理した結果、スパイクタンパク質の開裂を認めた。以上の結果から、口腔細菌のプロテアーゼがSARS-CoV-2のスパイクタンパク質を開裂し、感染性獲得に関与することが示唆された。 SARS-CoV-2が効率よく感染するためには、ヒト細胞表面上に発現するプロテアーゼTMPRSS2によりSARS-CoV-2のスパイクタンパク質を開裂させる必要がある。また、インフルエンザウイルスにおいてもTMPRSS2が存在することにより感染を促進させる。そこで、宿主細胞への口腔細菌の刺激がTMPRSS2の発現を増強させるのか検討した。ヒト呼吸器細胞株を口腔細菌にて刺激した結果、TMPRSS2遺伝子の発現亢進を認めた。以上の結果から口腔細菌の刺激を受けた宿主細胞は、呼吸器ウイルス感染が促進される可能性が示唆された。 エラスターゼは、インフルエンザやSARS-CoV-2感染促進に働くことが報告されている。そこで、マウスに口腔細菌を誤嚥させ、肺におけるエラスターゼ遺伝子発現状態を調べた。その結果、口腔細菌の誤嚥によりエラスターゼ遺伝子の発現亢進を認めた。以上の結果から、口腔細菌はエラスターゼの発現を誘導し、呼吸器ウイルス感染を促進させる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、口腔細菌がSARS-CoV-2のスパイクタンパク質を開裂させることを明らかにすることができた。また口腔細菌により宿主細胞を刺激することでSARS-CoV-2やインフルエンザウイルスの感染を促進させるプロテアーゼの発現を亢進させることを明らかにした。口腔細菌が呼吸器ウイルス感染を促進させることが明らかになりつつあることから、進捗状況はおおむね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
プロテアーゼ欠損口腔細菌株を用いて、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質を開裂させるプロテアーゼを同定する。また、口腔細菌により誘導されたTMPRSS2の発現亢進が実際に呼吸器ウイルス感染を促進させるのかを明らかにするためインフルエンザウイルスもしくはSARS-CoV-2スパイクタンパク質偽型レンチウイルスを用いた感染実験を行う。口腔細菌を誤嚥することによりエラスターゼの発現が亢進されることから、誤嚥させたマウスの気管支肺胞洗浄液(BALF)を回収し、BALFを添加した培養細胞にウイルスを感染させ、その影響を調べる。
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Causes of Carryover |
人件費を支出する予定であったが、次年度に支出することとなったため、次年度使用額が生じた。また、コロナ禍により学術大会がオンライン開催となったため、旅費が不要となり残金が生じた。研究計画に変更はなく、口腔細菌が呼吸器ウイルス感染に及ぼす影響を明らかにするため、次年度において実験材料、試薬、人件費などに繰越した研究費も含めて使用する。
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Research Products
(5 results)