2023 Fiscal Year Research-status Report
地域で展開可能な歯科領域のオンライン診療モデルの構築
Project/Area Number |
21K10273
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Research Institution | National Institute of Public Health |
Principal Investigator |
竹田 飛鳥 国立保健医療科学院, その他部局等, 主任研究官 (70885144)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 歯科医療提供体制 / オンライン診療 / 感染症対策 / アクセシビリティ / 口腔機能管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウイルス感染症の流行を契機に、国内のオンライン診療は着実に体制が整備されつつある。厚生労働省が平成30年に発行した「オンライン診療の適切な実施に関する指針」が令和5年に一部改訂されたことを受け、歯科領域の指針についても策定に向けて検討が開始された。また、2年前の令和4年診療報酬改定では、医科と比べて歯科はほぼ評価がされなかったが、令和6年改訂では評価が追加された。そこで本年度は国の歯科オンライン診療の動向の整理と、診療報酬改定前の歯科オンライン診療の事例を収集することを目的に、①国の動向に沿った簡易チェックリストの作成、②令和6年診療報酬改定の類型化、③ヒアリング調査、を実施した。なお、本研究では基本的に「Dentist to P」を想定している。 まず、①は令和6年3月に発行された「歯科におけるオンライン診療の適切な実施に関する指針」の整理を行った。本研究で進めてきた方針と同様に、対面診療とオンライン診療のベストミックスを作ることにより、診療の質を向上させることを柱のひとつとしていた。「対象患者」、「対象疾患」、「環境整備」、「その他」の項目に分けて、国の指針等を反映した簡易チェックリストを作成した。 次に、②の令和6年診療報酬改定では、継続的な口腔機能管理を行う患者と新興感染症等の発生時に、対面診療が困難な場合の歯科オンライン診療を評価しており、情報通信機器を用いた場合の初診料と再診料が新しく算定できるようになった。また、「対象疾患」として、舌痛症や三叉神経ニューロパチーが新たに記載された。さらに、口腔がん手術後の経過観察等で歯科遠隔連携診療が新しく評価された。 ③では、昨年度から引き続き歯科オンライン診療に係る事例収集を行い、スマートデバイスを利用した口腔内評価や、多職種連携のためのマニュアル作成の有効性、臨床への応用の課題が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は昨年度に積み残した歯科領域のオンライン診療事例を収集し、対面診療と組み合わせたオンライン診療パターンをシミュレーション、地域で展開できる新しいオンライン診療モデルの構築に向けて準備を行う予定であった。一方で、厚生労働省等による歯科オンライン診療の体制整備が加速したため、国の示した方向性から本研究が大きく逸れることがないように軌道修正を行った。本研究において事例収集を行っていた「対象患者」や「対象疾患」、「環境整備」の参考とするため、新たに令和6年3月に発行された「歯科におけるオンライン診療の適切な実施に関する指針」等を整理して、簡易チェックリストを作成した。あわせて、令和6年診療報酬改定で歯科オンライン診療に係る項目を類型化して、内容の整理を行った。今年度までのヒアリング調査では、診療報酬を算定するためのハードルが高いことが、歯科オンライン診療を実施する上でひとつの壁となっていることが報告されていた。令和6年診療報酬改定で新たに評価されたことにより、歯科医師等の歯科医療従事者のオンライン診療実施に対する意識が、今後大きく変化する可能性が考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
歯科オンライン診療の先進的な事例を収集することを目的に、引き続きヒアリング調査を実施する。その際には、歯科におけるオンライン診療の指針が示されたことや、診療報酬改定の影響について、重点的に調査を行う。また文献調査も継続し、米国や英国等の諸外国の歯科オンライン診療の実施状況や個別事例を収集する。これらの収集した事例から一般歯科診療を行う歯科診療所が取り入れやすい例示を選定し、対面診療と組み合わせ可能と考えられるオンライン診療例を作成する。本年度に作成したオンライン診療を実施するための簡易チェックリストをアップデートし、診療の流れを示した参照モデルを構築する。これらの研究成果は、論文や学会等で発表することを予定している。
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Causes of Carryover |
本年度においても、ヒアリング調査のために大学附属病院等に赴いたが、対象者が少数であった。また海外ジャーナルに投稿している関連論文の査読が長引いており、掲載料として想定していた経費が使用できなかった。次年度は論文掲載料に加え、ヒアリング調査のための交通費や謝金、情報収集のための学会参加、文献調査等に経費を投じる予定である。
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