2021 Fiscal Year Research-status Report
薬物治療の意思決定プロセスに影響する要因連関の可視化による医療安全対策の研究
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21K10282
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
渋谷 昭子 日本大学, 医学部, 助教 (20611619)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 医療安全 / テキストマイニング / 意思決定 / 思考過程 / 薬物治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、意志決定プロセスには価値観、感情、情報の影響による医療事故・ヒヤリハットの危険が内在するという新しい概念により、医療者の価値観、感情、情報との連関をテキストマニングにより分析・可視化するVDPM(Visualization of Decision-making Process in Medicine)マップを構築し、思考の段階からの分析手法を提起して臨床での活用を検証することである。 令和3年度に実施した内容は下記のとおりである。 1. 価値観、感情の分類法や情動行動研究の文献レビュー (1). Eduard Sprangerの「価値観の6類型」、Schwartzの「10種類の価値観」、見田の価値観、Rokeachの「18種類の価値観」、そしてPlutchikの「感情の輪」、Lernerらの「意思決定と感情の連関性」などの多様な価値観、感情分類法について文献レビューを行った。 (2). さらに、Thalerの行動科学、ArielyやMotterliniの行動経済学や情動行動、特に意思決定に影響を与える感情の分析に関する研究等について、世界的に見た心理学や経済学分野での研究成果や書籍について調査を行った。情動行動研究について文献レビューを行った。 (3). それらの結果を踏まえて、意思決定との連関を検討した。 2. 医療事故・ヒヤリハット事例の抽出 (財)日本医療評価機構で公開している「医療事故報告書」「ヒヤリハット事例報告書」から薬物治療において適切と考えられる事例について抽出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度の研究計画として立案した内容についての進捗状況は下記のとおりである。 1. 価値観、感情の分類法や情動行動研究の文献レビュー Sprangerの人々の分化に対する考え方を検討し、理論(論理)、経済、美(審美)、社会、権力、宗教からなる6つの価値観分類、見田の価値を持っている機能に着目した快、愛、利、正の4つの分類、そして、Rokeachの人間が求める価値として望ましい究極のあり方を示す最終価値と、最終価値に到達するために必要な状態を示す手段価値を上位価値とし、その下に18種類の価値を位置づけた。感情の分類法では、Plutchikの「感情の輪」における8つの基本感情(喜び・信頼・恐れ・驚き・悲しみ・嫌悪・怒り・期待)等について検討を行った。さらに、Thalerの行動科学、ArielyやMotterliniの行動経学や情動行動、特に意思決定に影響を与える感情の分析に関する研究等について、世界的に見た心理学や経済学分野での研究成果や書籍について調査し、意思決定に影響する価値観、感情との連関を検討した。 2. 医療事故・ヒヤリハット事例の抽出 (財)日本医療評価機構で公開している「医療事故報告書」「ヒヤリハット事例報告書」から薬物治療において適切と考えられる事例について抽出した。 以上のことから、おおむね順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度の結果をもとに、抽出した事例報告書の事例内容、背景要因について、テキストマイニング(Nazuki Emotion Analyzer Library使用)により、出現する単語や出現頻度、相関関係等について分析を行い、価値観、感情や情報について検討する。それらの結果について、意思決定プロセスに影響した価値観、感情や情報をコレスポンデンス分析にて多次元空間にプロットして連関を可視化するVDPM(Visualization of Decision-making Process in Medicine)マップを作成する予定である。研究計画に大きな変更は無い。
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Causes of Carryover |
(理由)令和3年度は、予定していた国内の学会等参加についてオンラインでのWeb開催に変更になったことや、日程調整が折り合わず、参加できなかったこと等により旅費等の次年度使用が生じた。 (使用計画)次年度は、スケジュール管理を徹底し、成果発表のための国内外の学会等への参加や、調査・情報収集のための打ち合わせへの参加の回数を増やし、計画に沿った旅費の使用を行う。
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