2021 Fiscal Year Research-status Report
Sense of Community and Community Participation during the COVID-19 pandemic
Project/Area Number |
21K10294
|
Research Institution | National Center for Geriatrics and Gerontology |
Principal Investigator |
黒田 佑次郎 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 認知症先進医療開発センター, 主任研究員 (50538783)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡部 麻衣子 自治医科大学, 医学部, 講師 (60736908)
坪野 圭介 和洋女子大学, 国際学部, 助教 (80884246)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 共同体感覚 / 社会的距離 / 行動・心理症状 / ナラティブの検証 / シチズン・サイエンス / 新型コロナウイルス感染症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、新しい社会に求められている「他者との距離を保つ(Social Distance)」という状況のなかで、人々がどのように共同体感覚と構築・再構築しているかを、異なる分野の専門家が臨床的・人文社会学的視点から共時的・通時的分析を行うものである。 臨床の研究では、変化に影響を受けやすいとされる認知症の領域に焦点をあて、専門医やケアサービス提供者へのインタビューを行うとともに、もの忘れ外来の臨床データを経時的に分析することにより、認知症当事者への影響を定量的に分析した。その結果、認知症患者の行動・心理症状(BPSD)がパンデミック後に増悪することが示され、その要因として、保護的要因である生活習慣やデイケアサービスの利用が変化していることが明らかになった。今後はケアサービス提供者のデータも含めた分析を予定している。 社会学の研究では、今年度、シチズン・サイエンスをめぐる現状と内容の整理を行った。シチズン・サイエンスは現在、各国で多様な形で実践され、北米、欧州、ニュージーランド、台湾等では政府が注目し、国民への周知に取り組んでいる。現在、各地での実践の多くが、デジタルデバイスの発展によって可能になったものであることに特に着目している。今後は「関心の共同体」としてのシチズンサイエンスの営みと、デジタル化との関連をより明確にしたい。 文学の研究では、今年度は、関連文献の収集と整理を主に行なった。文学テクストは基本的に「人と人」、「人と環境」の関係性を描くものであるゆえに、「病」や「ウイルス」はそうした関係に根源的な変化を生じさせる契機としてつねに主題化されてきた。コロナ禍において、あらためて世界文学的な視座で見直されている「疫病」のテーマを通時的に整理するとともに、グローバル化した現代社会での疫病に対する共時的な意味づけについてもマッピングを行い、今後の詳細な分析の準備を進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画通り、臨床・社会・文学の研究それぞれが研究計画をたて、キックオフミーティングを行い研究組織の立ち上げを行った。臨床データの分析は計画通りに進んだ一方で、フィールドワークやインタビュー調査といった社会調査に関しては、新型コロナウイルス感染症に伴う緊急事態宣言等により、予定されていた調査を延期せざるを得なかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
共時的文脈の解明(臨床)では、COVID-19に関する社会調査を、不安と予防行動、そして共同体感覚の観点から行う。一年目に公衆衛生関係者 への聞き取り調査と文献調査を行い、COVID-19に対する社会的反応を整理する。二年目にWeb調査を行い、データ集計および分析を行う。後半 に分担研究者とともにデータの解釈を行い、社会的反応の疫学的分析を行う。三年目には得られた結果を国内外の共同研究者・保健医療従事者 にフィードバックをする。
通時的文脈の解明(文学)では、世界各国で紡がれてきた災害・疫病に関する文学作品を、現在的な視点から分析する。一年目には、国内でテ クストと基礎資料の収集・分析にあたる。二年目には、国外の共同研究者とともに、日本語圏・英語圏以外のテクストも含めた分析をおこない 、COVID-19における共同体のありかた、環境と人間のかかわりにつながる問題系を抽出する。三年目には、国内外の共同研究者との知見の交換 を経て、言語態分析にもとづくエコクリティシズムと臨床研究や社会学研究とを緊密に結びつけた分析結果を示す。
通時的文脈の解明(社会学 )では、一年目に、福島事故における市民科学活動の分析を通して、市民科学活動を「関心の共同体」として分析するための分析的視座を確立 する。この中で、COVID-19の感染拡大が、各国で行われている市民科学活動に及ぼす影響を明らかにするための調査デザインと調査項目を確定 する。二年目は、各国で半構造化面接と質問紙調査を行い、集計および分析を行う。三年目には得られた結果を、学術論文にまとめて発表する 他、「地縁血縁に基づく共同体が失われる経験における科学活動の意義」として提言にまとめ、各国の市民科学活動および行政機関にフィード バックする。
|
Causes of Carryover |
COVID-19に伴う緊急事態宣言に伴い、予定していた研究打ち合わせや調査を延期せざるを得なかった。次年度に可能な範囲で現地調査を行うとともに、Web会議や調査を活用していく予定である。
|
Research Products
(12 results)