2022 Fiscal Year Research-status Report
性別違和を有する者の生きづらさの可視化:アンケート調査による治療評価法の確立
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21K10302
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
難波 祐三郎 岡山大学, 大学病院, 教授 (00335605)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
駒越 翔 岡山大学, 大学病院, 医員 (00896532) [Withdrawn]
渡邊 敏之 岡山大学, 大学病院, 助教 (30379804)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 性別違和 / Gender-Q / アンケート調査法 / 治療効果判定 / 客観的指標 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年(平成30年)4月1日に平成30年度診療報酬改定が施行され、性別適合手術や乳房切除など性同一性障害の手術療法に対する健康保険の適用が開始された。しかし、性同一性障害の治療有効性については、いまだ客観的評価は確立されておらず、治療効果判定の客観的指標の確立が急務であった。岡山大学ジェンダーセンターでは、これまでの研究で、性別違和の客観的指標となる質問項目を選択してきた。それらを用いて性別適合手術の術前後で質問紙調査を実施し、統計処理による手術有用性の検証を行うことで、治療効果の客観的評価方法の開発を行っている。最終的な目的は、得られたデータをフィードバックして、更に質問項目の整理を行い、治療有効性・性別違和を客観的に評価可能な質問紙調査票をGender-Qとして確立、実臨床における有用性を確認していくことである。対象となる性同一性障害の治療としては、男性型胸壁形成術(chest wall contouring surgery 以下CCS)、外陰部女性化術、陰茎形成術、顔面女性化術、そして声帯手術である。この中で、CCSは、Transmenの症状緩和を目的に行われる手術加療の一つであるが、症例数が最も多いことから、第一に評価するべき事項とした。我々が実施した客観的指標となる質問紙調査は、術前後での性別違和の改善評価をUtrecht Gender Dysphoria Scale(以下UGDS)とジェンダー・アイデンティティ尺度(以下GI尺度)、QOL変化をWHO Quality of Life 26(以下WHOQOL 26)、うつ状態の変化をベックうつ質問票(以下BDI-II)とProfile of Mood States 2nd Edition(以下POMS2)で行った。すべてのアンケートは臨床心理士が施行し、得られたデータを統計学的に検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理由 現在2023年3月までに術前・術後1か月・術後1年いずれかの検査を行った、CCS施行者・もしくは施行予定のTransmenのデータ取得を終了した。解析は2022年12月までに手術を行った183例については終了した。統計解析については岡山大学大学院医歯薬総合研究科 疫学・衛生学分野の教員と大学院生の協力を得た。解析方法としては、欠損値を含めての解析を行うために混合効果モデルを用いた。全体として、精神科疾患の既往と周術期合併症はネガティブに、就学・就業とパートナーの存在がポジティブに作用する傾向にあった。また、いずれの心理検査においても、術前に比べて術後では有意な値の改善を認め、手術の有効性が示された。なお、術後1か月と術後1年ではその結果に有意差は認められず、ホルモン療法や戸籍変更による値への影響も確認されなかった。このことから、CCSの有効性と、CCSによる症状緩和の持続性が示された。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、男性型胸壁形成術において、複数種類のアンケート調査法をもちいることで、症状緩和の程度をスコアー化し、可視化することが可能であった。今後はさらに解析を進め、患者満足度などの主観的な評価についても行っていく予定である。最終的には、CCS以外の性別適合手術の評価法の確立と、多施設でのアンケート調査法を用いた術後評価を目標としている。
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Causes of Carryover |
令和4年度は、アンケート調査及び調査用紙の購入に経費を使用した。症例数を積み上げ、前年度よりも飛躍的にサンプル数を増やすことができた。ただ、より多くの症例蓄積のために時間を要したことに加え、解析方法の確立に難渋したため論文化に至ることはできなかった。次年度は、解析がまだ終了していない症例について解析を進めるとともに、論文化や国際学会での発表を行っていく予定としている。よって、発生した残金は、その費用に充当する予定である。
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Research Products
(1 results)