2023 Fiscal Year Research-status Report
性別違和を有する者の生きづらさの可視化:アンケート調査による治療評価法の確立
Project/Area Number |
21K10302
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
難波 祐三郎 岡山大学, 大学病院, 教授 (00335605)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
駒越 翔 岡山大学, 大学病院, 医員 (00896532) [Withdrawn]
渡部 紫秀 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), その他部局等, 医師 (30793252)
渡邊 敏之 岡山大学, 大学病院, 助教 (30379804) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 性同一性障害 / 性別適合手術 / 質問紙調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は最終年度であったこともあり、データ収集の完成・それをもとにした解析を行った。研究期間内の参加者は術前243人、術後1か月190人、術後1年137人であった。術後1か月・1年に至る前に研究期間が終了してしまった当事者も多く、純粋な脱落者(研究期間内に術後1年までの観察が可能であったにもかかわらず、自ら受診をしなかった当事者)は総勢19名であった。 精神既往を有する当事者は12.8%、術後合併症(保存加療も含む)発生率は8.82%であった。ホルモン療法は87.5%の当事者が術後1か月を過ぎてから開始した。混合解析モデルを用いてデータ解析を行った。ユトレヒト性別違和尺度・WHO QOL・POMS2・BDI-2いずれの質問票においても、術前と比して術後1か月・1年で有意に値は改善した。術後1か月と術後1年での値を比べると、有意差は認めなかった。パートナーの存在や、就業/就学をしていることが各心理検査の値にポジティブに働き、逆に精神既往や合併症の存在がネガティブに働くことが判明した。しかしながら、ネガティブな因子を有する当事者でも、術後、有意に各点数が改善したことから、手術加療の有効性が示唆された。また、1か月と1年で値が増悪しなかったことから、その効果の持続性が示された。ホルモン療法が値に影響を及ぼさなかった点については、手術そのもののインパクトの大きさを示していると考えられた。 アンケート調査においては9割近くの当事者が精神状態の改善を、8割近くが性別違和の改善を、8割強で生活状況の改善を認めた。基礎疾患である精神疾患が増悪した当事者が1名、手術を起こったことを後悔したと回答したが、100%が「手術を行った際の気持ちは間違いではなかった」と答えた。 以上より、本年度は定量的に男性型胸郭形成術の有用性を示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」欄に記載をした通り、男性型胸郭形成術の有効性を定量的に示すことが出来た。本研究で使用した質問紙票は、世界中で使用されており、その妥当性はエビデンスに基づいて示されている。現在、性別違和に対する治療の評価方法について、コンセンサスを得たものが存在しないが、本研究が評価方法確立の一助となる可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は国際学会での発表や論文発表を検討している。本研究で採用した治療効果評価方法について他施設間で検討を行い、その妥当性について評価を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
本年度はデータの収集・解析が主となり、国際学会への参加や論文投稿を行うことが出来なかった。次年度は、論文投稿および国際学会参加のために助成金を使用する予定である。
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Research Products
(3 results)