2021 Fiscal Year Research-status Report
生殖補助医療のもたらす法制度上の新たな政策課題について
Project/Area Number |
21K10306
|
Research Institution | Kagawa Prefectural College of Health Sciences |
Principal Investigator |
南 貴子 香川県立保健医療大学, 保健医療学部, 教授 (10598907)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 生殖補助医療 / 出自を知る権利 / オーストラリア |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国では、2020年12月に、「生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律」が成立したが、子の出自を知る権利の保障等、生殖補助医療の提供や、それに伴う情報の保存・管理・開示等に関する規制の在り方については、2年を目途として、検討が加えられることとされた。 本研究では、生殖補助医療において先進的な法制度化を行っているオーストラリア・ビクトリア州を中心に、海外における先行事例の分析をもとに、日本の今後の生殖補助医療をめぐる法規制の整備に向けての課題について検討を行う。 ビクトリア州では、Infertility (Medical Procedures) Act 1984(1984年法)の制定以来、約10年ごとの法改正によって、子の出自を知る権利の保障をより確実なものとしてきた。特にAssisted Reproductive Treatment Act 2008(2008年法)では、子の出自に関する情報への申請年齢の廃止や、出生証明書の添付文書によって子の出自を告知するなど、子の「出自の事実とともに成長する権利」を保障するための法改正がなされた。さらに2016年の改正法では、ドナーの匿名性廃止の法制度前に生まれた子の出自を知る権利を遡及的に認めることとした。2008年法では、シングル女性やレズビアン女性の生殖補助医療の利用も認められている。 日本においても、生殖に対する考え方の多様化、晩婚化に伴い、生殖補助医療の需要は今後一層増加することが予想される。ビクトリア州における生殖補助医療の利用の現状を分析することにより、生殖補助医療の法制化における今後の課題について検討した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目の研究成果については、『日本ジェンダー研究』(日本ジェンダー学会)及び『家族関係学』(日本家政学会家族関係学部会)において、それぞれ「提供配偶子を用いる生殖補助医療の法制化をめぐる課題―オーストラリア・ビクトリア州の事例に焦点を当てて―」、「生殖補助医療と家族」の論文を発表した。また、第47回日本保健医療社会学会大会においても、オンラインでの口頭発表を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
生殖補助医療における配偶子提供のあり方や代理懐胎をめぐる世界的状況にも目を向けながら、生殖補助医療において先進的な法制度化を行っている海外の事例の分析をもとに、引き続き、日本の今後の生殖補助医療をめぐる法規制の整備に向けての課題について検討を行う。
|
Causes of Carryover |
世界的な感染症の広がりにより、学会や海外での資料収集などのための旅費を用いることができなかった。感染症の状況も見据えつつ、旅費にあてることのできない分については、国内でできる範囲での資料収集のために必要な経費にあてる。
|