2023 Fiscal Year Annual Research Report
生殖補助医療のもたらす法制度上の新たな政策課題について
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21K10306
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Research Institution | Kagawa Prefectural College of Health Sciences |
Principal Investigator |
南 貴子 香川県立保健医療大学, 保健医療学部, 教授 (10598907)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 生殖補助医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
家族・親子関係の視点から、生殖補助医療をめぐる課題について検討した。オーストラリア・ビクトリア州のAssisted Reproductive Treatment Act 2008(2008年法)の2016年改正および2020年改正の事例をもとに、子の出自を知る権利の遡及的保障、および生殖補助医療を利用する権利の保障について論じた。ビクトリア州では2016年の法改正によって生殖補助医療により生まれた子の出自を知る権利が遡及的に認められることとなった。また、2008年法の制定に際して、生殖補助医療を利用する者の親としての適格性を調べる目的で、「犯罪歴と子どもの保護命令チェック」(ポリスチェック)が導入されたが、ポリスチェックは不妊治療を受ける者への差別としてとらえられたことや、その後、児童への虐待を防ぐ制度を整備することによって、2020年の法改正により廃止された。 代理懐胎については、2021年にインドで成立したSurrogacy (Regulation) Act, 2021とビクトリア州の2008年法とを比較分析することにより、代理懐胎の利用と、それによって生じる親子関係などの新たな課題について論じた。ビクトリア州では2008年法によって、利他的代理懐胎が認められている。インドでの代理懐胎も、利他的代理懐胎のみが認められるが、関係当局からの適格証明書、必須証明書を得る必要があり、厳密な規制のもとにおいてのみ許可される。生まれた子の親子関係は、ビクトリア州では、申請によって、代理懐胎者から代理懐胎依頼者への移転が必要とされるが、インドでは、生まれた子は代理懐胎依頼者の生物学的な子とみなされる。日本では、現在日本産科婦人科学会の会告において、代理懐胎の実施は認められていない。日本における現状も踏まえて、代理懐胎をめぐる法規制の在り方について論じた。
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