2022 Fiscal Year Research-status Report
自殺予防因子の探索およびその普及と定着の方法に関する研究
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21K10318
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Research Institution | The Institute of Statistical Mathematics |
Principal Investigator |
岡 檀 統計数理研究所, 医療健康データ科学研究センター, 特任准教授 (10649247)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
織田澤 利守 神戸大学, 工学研究科, 教授 (30374987)
山内 慶太 慶應義塾大学, 看護医療学部(藤沢), 教授 (60255552)
大平 悠季 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 助教 (60777994)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 自殺予防 / コミュニティ |
Outline of Annual Research Achievements |
当研究チームは、自殺が極めて少ない地域(自殺希少地域)を対象に質的・量的研究を行ない、その結果から自殺の発生を抑制する「自殺予防因子」を抽出した。次の段階として、自殺予防因子の他地域への普及と定着に向け、その手立てを検討する。 本研究ではこれまでの研究成果をふまえ、さらに次の二つの方向に発展させる。ひとつは、A.成長過程で身に付ける思考や行動様式の習得プロセスの把握、もうひとつは、B. 問題の顕在化と早期介入を促す住民のコミュニケーション特性とコミュニティの空間構造特性の抽出である。また、AとBの研究成果を照らし合わせ、相互の作用とそれがコミュニティにもたらす影響についても考察する。 なお自殺予防因子は地域社会と人の営みの中に潜むことから、心理学や精神医学をはじめ、地理学、都市工学、人間行動科学など様々な視点から本研究に取り組む予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の主たる事業として、昨年度に引き続き、予定通りこどもを対象としたコホートスタディを実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
A成長過程で身に付ける思考や行動様式の習得プロセスの把握 本研究の実施年は、2017年より追跡してきた子どもが義務教育を終え、進学もしくは就職を選択する年に当たる。彼らの環境適応力や問題解決能力が発動される人生の節目での調査であり、小学5年生まで遡っての調査データを連結して分析することにより、そうした社会スキル習得を促す要因と阻害する要因、その両方の特定が可能となる。意義ある知見を得るためには、調査を長期にわたり継続することが必須である。なお、義務教育期間中の児童生徒についてはこれまでどおり教室で調査を実施し、中学卒業後の青少年についてはオンラインアンケート調査を実施する計画である。 B. 問題の顕在化と早期介入を促す住民のコミュニケーション特性とコミュニティの空間構造特性の抽出 住民の援助希求行動には日頃のコミュニケーションが影響していること、そしてそのコミュニケーション特性は町の空間構造によっても促されていること―、こうした関係性を明らかにできれば、特定の空間構造を“仕掛け”として他の地域にも設置し、住民間の望ましいコミュニケーションを誘い出すことによって、自殺リスクを抑制するコミュニティデザインへとつながる可能性がある。そのために、本研究ではさらに情報集散スポット―寺、墓地、商店、診療所、ベンチ、共同洗濯物干し場、井戸などを地図上にプロットし、実地調査とインタビューによって住民のコミュニケーション様式にどのような影響をあたえているかを把握する。また、それらスポットの増減によって動線がどう変化するか、また住民の遭遇頻度がどう増減するかを、GIS-地理情報システムを用いてシミュレーション する。以上を自殺希少地域と自殺多発地域の両方を対象に行い、比較する。
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Causes of Carryover |
子どもコホートスタディの対象者数が当初計画より増加する見込みであるため、今年度の使用を抑えて次年度事業の費用に充てることとした。
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Research Products
(20 results)