2022 Fiscal Year Research-status Report
医療・医学研究分野のクラウドファンディングに関する倫理的・社会的課題の検討
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21K10342
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
中田 はる佳 国立研究開発法人国立がん研究センター, がん対策研究所, 研究員 (10592248)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 研究倫理 / 患者・市民参画 |
Outline of Annual Research Achievements |
Medical crowdfunding, Crowdfunding(以下CFとする), Ethicsなどのキーワードで文献調査を継続した。主な課題として、不平等が生じること、患者本人の自律的な意思決定が阻害される恐れがあること、科学に確立されていない治療へのアクセスを助長すること、患者や家族のプライバシー侵害につながる恐れがあることなどが指摘された。国外の文献の特徴として、「個人」の治療に関連する検討が目立つことが指摘できる。すなわち、個人の治療費をCFで集めること(personal campaignなどと分類されていることがある)が広く行われている様子がうかがえた。他方、現時点では、国内のCFプラットフォームでは個人の治療費を集めるプロジェクトはあまり見当たらず、海外渡航移植の募金窓口としてCFが用いられている程度である。国ごとの医療制度の違いなどを考慮すると一概に比較することは困難だが、背景の一つとして、国内外のCFの利用規約やガイドラインを調査した(継続中)。これらの中には、プロジェクトの目的の妥当性の審査があることを定めるものや、「禁止プロジェクト」を設けているものもあった。また、特定の個人に偏りすぎるプロジェクトや個人の治療費を集めるプロジェクトを掲載する際には別途条件を課すことがあるなどの規定を設けているプラットフォームもあった。また、近年では、医学研究をはじめとする様々な研究の研究資金をCF経由で調達する例も見られ、研究者の研究資金調達に特化したCFプラットフォームもある。研究の科学的妥当性をどう担保するか、優先順位をどう考えるかといった点がCFを介した支援者に託されているかについて今後引き続きの検討が必要であろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画していた作業を継続しつつ、CFプラットフォームの利用規約の調査を加えたため作業量が増加した。CFと倫理に関する文献調査は、おおむね終了し、随時文献リストを更新している状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の取り組みを継続しつつ、CFプラットフォームの利用規約の整理を進める。国外の利用規約の調査に当たっては、翻訳サービスを適宜利用するなどして作業の効率化に努める。また、最終年度であることを考慮し、成果のまとめを見据えて作業を行う。
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Causes of Carryover |
参加を予定していた学会の多くがオンライン開催あるいはハイブリッド形式による開催となり旅費がほとんど生じなかった(ハイブリッド開催であっても、機関の方針によりオンライン参加を優先した)。また、研究進捗の遅れに伴い、論文投稿費用や英文校正費用がほとんど生じなかったため「その他」費用も予定より少ない使用となった。来年度は、現地開催の学会が増えると予想されること、また、機関の方針も緩和されつつあることを考慮して、積極的に現地参加をして情報収集を行う。研究成果のまとめにむけて、翻訳サービスなどを適宜活用して作業の効率化を図る。
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