2021 Fiscal Year Research-status Report
ヘルスケア領域における次世代連携モデルの探索―医療連携・多職種連携から社会連携へ
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21K10354
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Research Institution | Tohoku University of Community Service and Science |
Principal Investigator |
鎌田 剛 東北公益文科大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (50438595)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 社会連携 / 地域包括ケアシステム / 嚥下食 / 食支援 / 創造的摩擦 / 共通価値 / 医療連携 / 多職種連携 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ヘルスケア領域と異分野・異業種との「社会連携」に関し、理論的・実務的インプリケーションを抽出することである。そこで採択初年度は、これまでに取り組んだ医療連携・多職種連携の事例、食支援事例や嚥下食開発事例等の研究成果を、日本医療マネジメント学会と日本在宅薬学会において発表した。 また、コロナ禍への対応として、医療現場の訪問調査に代わる新たなデータ収集の機会として、NPO法人全国連携実務者ネットワークとの共催により、「第5回社会連携フォーラム」を開催し、本科研費研究の研究集会を兼ねることができた(2022年3月5日オンライン)。同フォーラムでは、自ら科研費テーマによる基調講演を行うと共に、各地の連携事例(山形,京都,大阪,岡山,宮崎)の実践報告を受け、ディスカッションに十分な時間を割くことができた。食支援、市民の意識啓発・健康づくり等の事例からは、コロナに負けず異分野・異業種の連携が広く展開されていることがわかり、貴重なデータ収集の機会となった。 これらの活動を通じ今年度は、社会連携の過程と促進要件、アクターの思考・行動様式について、仮説的枠組みを構築した。具体的には、社会連携においては、医療連携・多職種連携の現場とは異なり、(1)直面する困難の解決よりも、中長期のゴールをみすえた「対話」が重視されること、そのような対話の持続可能性の鍵が、(2)リーダーのコミットメント(覚悟,テーマ)によるフォロワーの巻き込み、(3)メンバーによる「共通価値」の共有、そして、(3)時には対立を生むような「創造的摩擦」にあることを明らかにすることができた。 また、研究から得られた知見を「教育」場面に実装するために、多職種連携教育と、地域社会を巻き込む連携教育活動のあり方に関し、さらに2つの学会・国際会議で発表することもでき、有意義な採択初年度となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究戦略として採用している「ケーススタディ」は、現地訪問による直接観察と関係者からのインタビューを主体とする。調査対象が主に医療現場ということもあり、今般のコロナ禍において、現地を訪問しての調査が困難をきわめた。そこで、訪問調査に代わる新たなデータ収集の機会として、連携実務者による全国団体との共催により、以下のオンライン研究集会を実施した。
鎌田剛「ヘルスケア領域における次世代連携モデルの探索―医療連携・多職種連携から社会連携へ」全国連携実務者ネットワーク第5回社会連携フォーラム(基調講演およびパネルディスカッション,2022年3月5日オンライン)
本研究集会においては、研究成果をふまえた基調講演を行い、その後、各地の連携事例(山形,京都,大阪,岡山,宮崎)の実践報告を受けディスカッションに時間を割いた。コロナ禍においても社会連携の活動が精力的に行われていることを示すデータが得られ、非常に有意義な機会となった。このオンラインによる代替調査を行ったことで進捗の遅れを食い止めることができ、また複数の学会発表ができたこともふまえ、「おおむね順調」との自己評価を申告するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、ヘルスケア領域と異分野・異業種による「社会連携」の理論的・実務的インプリケーションを抽出することである。そのためには、インタビューと実際の活動場面の観察から洞察を起こす必要があり、コロナの影響で初年度は実現しなかった現地訪問による調査活動を、可能な範囲で再開したい。 具体的には、今年度複数の学会発表で提示した仮説的枠組みを補完・補強するための、モデル構築型のケーススタディを積み上げていく計画である。状況によっては再びオンライン調査を組み合わせ、遅滞なく計画を遂行する。 実績欄でも触れたように、異分野・異業種による社会連携の現場では、直面する困難の解決よりも、中長期のゴールをみすえた「対話」が重視される。そのような対話の持続可能性の鍵は、リーダーのコミットメント(覚悟,テーマ)によるフォロワーの巻き込み、メンバーによる共通価値の共有、そして、時には対立を生むような創造的摩擦にある。 このような現時点での仮説的な説明枠組みを、より妥当で信頼性の高いものにしていくことが、次年度以降の研究の方向であり、そのためにより多くの現地事例にあたることが推進の方策となる。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により現地機関の訪問調査が困難になり、当初想定の旅費を使用しなかった。同様に学会・国際会議もオンラインとなり、相当の旅費支出が皆無となった。また、オンライン調査に必要な機器の選定と購入を優先し、当初購入予定であったデータ分析用のノートパソコンの購入を次年度へと先送りとした。 いずれもコロナの影響によるものであり、別欄に記載したとおり研究の進捗自体に問題は生じていない。今後は状況を見きわめつつ現地調査を再開し、当初計画どおりの旅費等の使用を行う計画である。
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Research Products
(4 results)