2021 Fiscal Year Research-status Report
地域圏統合型医療情報データベースを活用したヨード造影剤の安全使用に係る提言
Project/Area Number |
21K10373
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
兼児 敏浩 三重大学, 医学部附属病院, 教授 (30362346)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ヨード造影剤 / アナフィラキシー / 医療安全 |
Outline of Annual Research Achievements |
三重県内の9つの医療施設が参加する三重地域圏統合型医療情報データベース(以下、Mie-LIP DB)を活用したヨード造影剤の安全使用推進にかかる研究を行っている。 現在、Mie-LIP DBから造影CTを行った患者とそのうち、アドレナリンの投与がなされた患者の抽出作業を鋭意進めている。上記作業に並行して中央放射線部データベースから造影CT実施患者を抽出、また、造影剤によるアナフィラキシーとしてインシデントレポートが提出された事例も抽出した。 三重大学医学部附属病院において、2016年1月から2021年12月の期間中に、造影CTは延べ70,204人に施行され、そのうち造影剤によるアナフィラキシー発症事例(患者影響度レベル3b以上)として93件(0.13%)が報告された。うち15件(0.02%)はアドレナリンを使用し、緊急コールを要した。さらに1件は死亡に至った。過去に同一の造影剤を使用していたのは7件(0.01%)であり、使用回数の中央値は5回であった。この7件中、6件は緊急コールを要し、1件は帰宅後に救急搬送された遅発相反応を示したアナフィラキシー症状であった。免疫チェックポイント阻害剤の投与経験があったのは1件であったが重篤な経過となった。 上述した通り、過去に同一の造影剤を使用し問題がなかった事例でもアナフィラキシーが少なからず発生していることが確認された。しかしながら、現場では、前回の造影剤使用時に問題はなかったから今回も大丈夫だろうと一般的な薬剤アレルギーと同様の感覚がある可能性がある。また、複数回目の使用で初めて発症した場合は重篤となる傾向があることにも留意が必要である。さらに、近年汎用されるようになってきた免疫チェックポイント阻害剤は新たなアレルギーを惹起する可能性も指摘されていることから、造影剤アレルギーに対する対応は新しい局面を迎えている可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Mie-LIP DBからのデータ抽出が担当者の転勤等の理由で予定より遅れており、現在、三重大学医学部附属病院分のデータに取り組んでいるところである。抽出後直ちに、突合・検証が可能なように、中央放射線部データベースから造影CT実施患者の抽出、造影剤によるアナフィラキシーとしてインシデントレポートが提出された事例の抽出を行った。Mie-LIP DBのデータが本格的に活用できるまでの間の試験運用的な要素もあるが、入手したデータの範囲で、①造影CTの施行件数 ②ヨード造影剤によるアナフィラキシーの発生頻度 ③ヨード造影剤によるアナフィラキシーの予後 ④アナフィラキシー発症の予防対策の有無と効果の検討を行った。その結果、上述した通り、造影CT施行事例70,204件中、93件(0.13%)がアナフィラキシー発症事例として報告され、うち15件(0.02%)はアドレナリンを使用し、緊急コールを要した。さらに過去に同一の造影剤の使用で問題がなかった事例が7件(0.01%)あったがいずれも重篤な経過であり、使用回数の中央値は5回であった。 通常の薬剤は、過去にアレルギー歴がなければ特に問題なく使用されることが多く、より注意が必要な抗菌剤においても初回、および2回目の使用で問題がなければ、以降は通常の薬剤としての対応がとられることが多い。 ヨード造影剤においては複数回以上の使用において初めてアナフィラキシー症状を呈した事例が散見されたことは新たな知見である。また、造影剤の初回使用時に発症したアナフィラキシーと比較するとより重篤な印象がある。これらには、免疫チェックポイント阻害剤や他の抗がん剤の影響があることも示唆される報告もあり、さらなる解析が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
Mie-LIP DBを活用して、予定通り、三重大学医学部附属病院を含む参加9施設について、①造影CTの施行件数 ②ヨード造影剤によるアナフィラキシーの発生頻度 ③ヨード造影剤によるアナフィラキシーの予後 ④アナフィラキシー発症の予防対策の有無と効果について、研究を進めていく。 また、新しいテーマとして、造影剤の使用回数とアナフィラキシー、さらに、免疫チェックポイント阻害剤や抗がん剤と造影剤アレルギーとの関連についても鋭意検討を行っていく。
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Causes of Carryover |
Mie-LIP DB担当者の転勤等があり、担当部門に支払うべき使用料が2021年度は発生しなかった。また、コロナ禍の影響で、Mie-LIP DB参加施設間の交流や情報交換が困難であった。以上の理由で2021年度の使用実績は少なく2022年度に持ち越すこととなったが、2022年度はMie-LIP DBの活用等を鋭意行っていく予定である。
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