2022 Fiscal Year Research-status Report
ストラクチャーから整備されたがん診療連携拠点病院を長期的アウトカムから評価する
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21K10388
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Research Institution | Osaka International Cancer Institute |
Principal Investigator |
宮代 勲 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(研究所), その他部局等, がん対策センター 所長 (80501824)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若宮 翔子 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (60727220)
尾谷 仁美 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(研究所), その他部局等, がん対策センター政策情報部生物統計研究職 (70896886) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | がん診療連携拠点病院 / 長期予後 / 診療規模 / アクセス / 手術数閾値 / 通院時間 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん診療連携拠点病院は、整備に関する指針に基づき、規模や配置などの医療提供体制というストラクチャーの観点から整備が進められてきたが、がん患者やその家族の視点に立脚すれば、生存率に裏打ちされていると期待するのが自然である。そこで本研究では、診療実績と通院時間に着目し、それらが長期予後にどのように影響を及ぼすかを明らかにする。具体的には、リアルワールドの実測データによる長期予後の把握が可能な大阪府がん登録等を活用し、(1)診療実績と生存率の関連性に指標となる変曲点が存在するのか、(2)計画的かつ待機的といえるがん診療での通院時間が生存率に影響するのかを検討する。前年度に引き続き令和4年度、研究計画調書に記載の流れ図に沿って、研究分担者および研究協力者とともに研究を進めた。
1)診療実績:全がんでの推移を含めた検討(Okawa S et al. Cancer Sci. 2022;113:1047)に続き、大阪府がん診療拠点病院66施設における2007-11年診断(食道、胃、大腸・直腸、膵、肺、乳)手術例64,402例を対象に、5年生存率を指標として手術件数の閾値を各がんで推定した(Okawa S et al. Cancer Med. 2023;12:1293)。手術の質の担保に活かせると期待している。
2)通院時間:2013-18年診断時大阪府在住の大腸がん患者53,885人(ステージ0を除く)に関する初回治療開始病院までの公共交通機関による通院時間を算出し、通院時間に関与する要因や医療圏による違いについて検討している。また、特定の駅から大阪府がん診療連携拠点病院等の最寄り駅までの所要時間に基づき、通院エリアを可視化するWebアプリケーションを開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
令和4年度、研究計画調書の流れ図に示す当初の計画以上に進展したと考えている。研究計画調書作成時に研究分担者として予定した生物統計研究職2名が各々の事情で退職することとなったが、うち1名は令和4年度末まで研究協力者として取り組んだ。新たな研究協力者も得て分析を進めている。
1)診療実績:初年度(令和3年度)に「分析①:全がん」の検討に加えて令和4年度予定としていた「分析②:推移」まで進めていたことから、令和5年度以降に計画していた「分析③:部位別」の検討まで研究協力者とともに進め、英文論文として成果にまとめた(Okawa S et al. Cancer Med. 2023;12:1293)。また、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の受診への影響をみた和文論文も発表した(小山史穂子ほか.日本公衆衛生雑誌.2022;69:957)。当初の計画以上に進展している。
2)通院時間:前年度に引き続き「分析①:医療機関視点のアクセス」の検討を研究分担者とともに進め、令和4年度、所要時間に基づいて通院エリアを可視化するWebアプリケーションを開発した。感染症蔓延等による制約で令和3年度後半に予定通り開始できなかった「分析②:患者視点のアクセス」の準備を令和4年度に研究分担者とともに開始し、新たに研究協力者を得て、令和5年度以降に計画していた「分析②:患者視点のアクセス」の検討を開始した。当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度も研究計画調書の流れ図に沿って、研究分担者および研究協力者とともに研究を進める。研究計画調書作成時に予定した研究分担者は3名から1名に減ったが、新たに研究協力者を得ており、必要に応じて協力者の増員をはかって研究を推進する。
1)診療実績:研究計画調書の流れ図に示した当初の計画を前倒しして、「分析③:部位別」の検討まで概ね進めていることから、2020年(令和2年)に作成した研究計画には含めていなかったが、同年にWHOが世界的大流行(パンデミック)を宣言する事態となった新型コロナウィルス感染症について、診療実績を含むがん医療に及ぼした影響の検討に取り組むこととし、令和5年度も継続する。
2)通院時間:引き続き、「分析①:医療機関視点のアクセス」について検討を進め、令和4年度に開発した所要時間に基づいて通院エリアを可視化するWebアプリケーションの改良を行い、「分析②:患者視点のアクセス」の検討とともに、研究期間終了までにウェブサービスとしての実装を目指す。令和4年度に大腸がんで分析を開始した通院時間に関与する要因や医療圏での違いの検討を進めるとともに、公共交通機関による通院時間と全生存率の関連性の有無を検討する。研究期間終了までに通院時間にする適切な提案へと繋げたい。
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Causes of Carryover |
高額化している掲載費用の支出に備え、物品購入を先送りする等して初年度に支出しなかったが、令和4年度に計画時の想定を超える額の掲載費用を支出することになった。物品購入を抑えたこと、新型コロナウィルス感染症蔓延等の行動制約により旅費の支出がなかったことから、次年度使用額が生じた。次年度も掲載費用や行動制約等、予想が難しいが、研究遂行に支障をきたさないよう使用していく。
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Research Products
(2 results)