2021 Fiscal Year Research-status Report
凍結胚移植法によるART出生児の神経行動学的発達に及ぼす影響についての実証的研究
Project/Area Number |
21K10391
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宮内 尚子 東北大学, 医学系研究科, 技術補佐員 (60596162)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 記緒 東北大学, 医学系研究科, 助教 (10803885)
小林 枝里 東北大学, 医学系研究科, 助教 (70634971)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 凍結胚移植 / 不妊治療 / 胎盤 / 3)低分子RNA(miRNA) |
Outline of Annual Research Achievements |
ARTは、自閉症や自閉症スペクトラム障害(ASD)の発症リスク要因の一つとなるとの報告がみられる。本研究では、我が国の前向きコホート調査を基に、ARTとASDの関連性について、より正確に評価することを目的とする。対象者としてART群(IVF, ICSI)(3,032名)、非ART群(人工授精、排卵誘発)(4,198名)、自然妊娠群(約90,000名)の3群に分類した。3歳児のASDの評価には、ICD-10の自己式質問票を用いた。まずARTとASDの関連のある共変量を明らかにし、多変量ロジスティック回帰分析を行った結果、全体としてはARTとASDとの関連は認められなかった(OR 1.13, 95%CI 0.93-1.33)。しかし、ARTを受けた母親の年齢を35歳以上と35歳以下に分けた場合、35歳未満のARTはASDのリスク増加に有意な関連を認めた(adjusted OR 2.43, 95%CI 1.19-4.98)。反対に、35歳以上の場合は、有意差を認めなかった。35歳未満の母親と35歳以上の母親の生活習慣の違いについて検討すると、35歳未満の場合、比較的健康水準が低く、経済力も低い傾向にあった。また、受動喫煙を含む喫煙の影響も大きく受けていることも判明した。これまでASDのリスク因子として、母親の肥満、糖尿病、帝王切開、抗うつ剤の使用などの報告はあるが、今回の調査ではART自体への影響は確認できなかった。しかし、根本的な理由は明らかではないが、ARTを受けた35歳未満の母親の特徴として、母体の体調不良や社会経済的環境の悪化の可能性がある。そのため今後も児の成長や発達について継続して調査を行う必要性があると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ARTと自閉症や発達障害(ADHD、LD)などの脳機能の発達に関係する障害については、国内で大規模な研究は未だ実施されていない。本研究では、ARTを治療別に分類し、さらに、両親の基本情報などの交絡要因も考慮し、凍結胚移植(FET)治療による出生児(5歳まで)の神経行動学的な影響について正確に評価することを目的としている。本年度は、3歳児の評価を行い、有意差は認めなかった。しかし今後さらに変化が出現する可能性もあり、引き続き5歳児の検討も行っていく。
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Strategy for Future Research Activity |
凍結胚移植(FET)が実施される時期の受精卵は、児の発育に機能するゲノムインプリンティング(GI)が不安定な時期である。次年度以降は、胎盤構成細胞を分離、精製し、神経行動学的に影響を及ぼすGI遺伝子の発現を調節するエピゲノム(DNAメチル化、miRNA)について、自然妊娠の胎盤と比較検討する。有意な変化を認めた場合、遺伝子予測プログラム(GO解析)にてリスク要因となるかどうかも検討する。
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Research Products
(1 results)