2021 Fiscal Year Research-status Report
The empirical evaluation of hygienic management in the manufacturing facilities of regenerative medicine
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21K10395
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
江副 幸子 大阪大学, 医学系研究科, 特任教授(常勤) (90379173)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
名井 陽 大阪大学, 医学部附属病院, 教授 (10263261)
紀ノ岡 正博 大阪大学, 工学研究科, 教授 (40234314)
大川 竜麻 大阪大学, 医学系研究科, 特任研究員(常勤) (40838520)
塩崎 元子 大阪大学, 医学系研究科, 特任助教(常勤) (50598828)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 再生医療 / 細胞製造環境の衛生管理 / iPS細胞 / 二酸化塩素 / 過酢酸 / 過酸化水素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、再生医療のための細胞製品製造の現場において必要な衛生管理について科学的データを蓄積するととも再生医療細胞製品の製造における衛生管理の標準化を目指す研究である。細胞調製施設(CPC)での空間除染においては、細胞への毒性や環境資材への残留などを考慮しなければならない。また、低濃度二酸化塩素による持続的空間除染の細胞への影響について検討する事、各種除染剤の影響についても比較検討する事を目的として研究を開始した。今年度の研究においては、1) 各種除染剤の培養液内滴下による細胞の生存、増殖への影響について、2) 二酸化塩素の二酸化塩素濃度と培養液中に溶解する二酸化塩素の濃度との相関の検討、3) iPS細胞に対する二酸化塩素の持続暴露の影響についてについて検討した。各種除染剤の培養液内滴下による細胞への影響については、環境の素材などへの吸着や残留量を検討し、作業所内での作業開始可能時期について検討した。iPS細胞に対する二酸化塩素の持続暴露の影響については、0.1ppmv及び0.05ppmvでの持続暴露においてiPS細胞の増殖や細胞死、身分化性の維持に影響がないことを示し、現在論文投稿中である。 さらに申請者らは、実験のための環境整備のため、二酸化塩素発生装置の環境設定を行った。二酸化塩素の濃度や液体への溶解、効果などは環境の温度や湿度に大きく影響を受ける。そのため、各種の温度湿度設定ができるよう整備した。インキュベータ内での湿度設定が困難であるが、飽和塩を用いて湿度の設定を可能とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)各種除染剤の培養液内滴下による細胞の生存、増殖への影響については二酸化塩素、過酢酸噴霧、過酸化水素噴霧による影響について検討した。その結果、過酸化水素のミスト噴霧については、除染終了後48時間でも残留が認められ、24時間までは細胞の生存や増殖に影響を及ぼすことが明らかになった。また、過酢酸については、通常の除染終了後速やかに濃度の低下を認め、HEPAフィルターへの吸着も認められなかった。除染後3から4時間で培養操作を再開できると考えられた。二酸化塩素による除染後の影響については、現在実施中。 2)二酸化塩素の二酸化塩素濃度と培養液中に溶解する二酸化塩素の濃度との相関の検討。インキュベータへの二酸化塩素内での持続暴露装置を整備した。 二酸化塩素の影響を調べるため、高温高湿度の条件、高温低湿度の条件、室温高湿度の条件、室温低湿度の条件などでの二酸化塩素の濃度の安定性を整備した。インキュベータ内での湿度維持のため飽和塩溶液を用いて湿度の維持方法を確立した。 3)iPS細胞に対する二酸化塩素の持続暴露の影響について。二酸化塩素0.1ppmvおよび0.05ppmv環境におけるiPS細胞の長期培養における品質評価を行った。これまで申請者らは間葉系幹細胞において同様の検討を行ってきた。0.1ppmvでは細胞老化が生じ、増殖が著明に影響を受けたが、0.05ppmvでは影響を受けなかった。一方、iPS細胞においては、0.05ppmv、0.1ppmv共に細胞増殖、細胞死、細胞老化、未分化性維持のいずれにおいても影響を受けず、酸化ストレスに対する影響が受けにくいことが示された。(論文投稿中)。さらにiPS細胞の分化への影響についても検討した。二酸化塩素 0.05ppmvへの暴露においては、三胚葉系への分化マーカーの発現に影響はなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、培養空間内、培養液中の各種除染剤が細胞の増殖、生存、分化等に及ぼす影響を検討し、また除染効果についての検討を行うこと、特に二酸化塩素については、CPC空間除染での指摘濃度の決定と効果的な使用法について探索する事を目的としている。 今年度は、滴下による培養液中の濃度と細胞への影響について検討したが、来年度以後さらに、他の薬剤についても検討を加える。二酸化塩素をはじめ、また、本年度までは多分化能を有するiPS細胞の長期培養において未分化性の維持の検討を行った。しかし、再生医療では、iPS細胞はin vitro、in vivoでの分化による機能回復を目的として利用されることから潜在的分化能は再生医療における重要なポイントとなる。申請者らはすでに三胚葉への分化についての検討を開始したが、さらにterminal differentiationについての検討も行う。 また、今年度整備した実験環境を利用し、空間除菌の効果についても検討する。一昨年より突如発生した新規ウイルスの蔓延により空間除菌の必要性が求められてきた。一方、空間除菌については科学的エビデンスが確立されていない。今年度に整備した低濃度二酸化塩素の環境において一般的な、細菌、真菌、マイコプラズマとともにウイルスを含めた二酸化塩素その他の除染剤による空間除菌の効果について検討する。
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Causes of Carryover |
実験は可能であったが、コロナにより一部資材の調達が困難であった。旅費に関しても、コロナの影響でWEBシステム利用となり、支出0となった。全体的にコロナの影響により、次年度への繰り越しを余儀なくされた。物品の供給も安定してきたとのことなので、さらに実験を進める。
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Research Products
(2 results)