BRCA1/BRCA2病的バリアント保有者の標的臓器外での発癌リスクの解明

2021 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 21K10404
• Research Institution: Juntendo University
• Principal Investigator: 江口 英孝 順天堂大学, 大学院医学研究科, 先任准教授 (00260232)
• Project Period (FY): 2021-04-01 – 2024-03-31
• Keywords: 遺伝性乳癌卵巣癌 / BRCA1/BRCA2 / 発癌リスク

Outline of Annual Research Achievements

遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)は主にBRCA1ならびにBRCA2遺伝子の病的バリアントによって引き起こされる疾患である。本邦においてもがんゲノム医療が保険収載となり、これらの遺伝子の生殖細胞系列における病的バリアント保有者の同定事例が散見される。がん患者が女性の場合サーベイランス法が確立しているが、男性に対しては男性乳癌ならびに前立腺癌のリスクのみが注視されているのが現状である。本年度は鋸歯状ポリープを多発する一卵性双生児症例で健常人のデータベースでは登録されていないレアバリアントBRCA2:c.4169T>G/p.Leu1390Trpを認め、これらの症例は一卵性双生児でありながらSerrated polypの発生個数が大きく異なっており、その要因として喫煙という環境因子の違いが示唆されることを報告した(Yoshida N et al. The promotion effects of smoking for polyp development in monozygotic twins with atypical colorectal polyposis. Case Reports in Gastroenterology. In press)。また当該バリアントはBRCA2タンパク質の細胞内局在に強く影響を及ぼす核外移行シグナルの保存性の高いアミノ酸である事から、このアミノ酸置換により、BRCA2の細胞内局在に影響するか、また染色体分配能などの機能に影響を及ぼすかについて、発現ベクターの構築を進め、培養細胞系での評価を進める予定である。また公共データベース上でこのバリアントと同様に核外移行シグナルの保存性の高いアミノ酸で未だ病的であるか定まっていないバリアントが複数登録されている事から、これらについても並行して解析を進める。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

標的臓器外である大腸組織において、喫煙という環境因子が関わる可能性を新たに示すことが出来た。分子細胞生物学的実験についても、ベクターの構築などを順次進めている。

Strategy for Future Research Activity

培養細胞株HEK293に、BRCA2遺伝子に細胞内局在に異常をきたすと考えられるミスセンスバリアントを導入した遺伝子発現ベクターをトランスフェクトし、その細胞内局在ならびに染色体の安定性について評価を行う。データベース上で既に登録されている当該バリアントの近傍に位置し、同様の効果がIn silico解析で認められる意義不明バリアントについても同様に評価を行う。
Serrated polyp多発一卵性双生児症例の新鮮凍結組織検体について、体細胞遺伝子解析を行い、BRCA2のSecond-hitの有無とMutation signatureならびに染色体コピー数の解析を行い、既存の経路から考えられるBRCA2遺伝子の関与について検討を行う。既存の発癌経路として知られるRNF43遺伝子が体細胞変異により不活化されているかの確認も併せて行う。またRNAの抽出を行い、トランスクリプトームの解析を行い、兄弟間でのシグナル系の違いについて検討を行う。
遺伝性大腸癌/ポリポーシス症例の解析を進め、BRCA1/BRCA2の病的バリアント保有者の同定を併せて推進する。
ヒト皮脂腺不死化細胞株(SZ95等)にゲノム編集技術を用いて、BRCA1/BRCA2遺伝子に病的バリアントを導入し、染色体の不安定性、細胞周期への影響等について検討を行う。
ヒト大腸不死化細胞にゲノム編集技術を用いて、BRCA2遺伝子のミスセンスバリアントを導入し、染色体の不安定性、細胞周期への影響等について検討を行う。

Causes of Carryover

発現ベクターの構築が未了のため、培養細胞を用いた実験を次年度に実施する事から、これらに要する経費を繰り越した。