2021 Fiscal Year Research-status Report
日本の結核菌株間の疫学的関連を判別するためのゲノム変異の閾値の解明
Project/Area Number |
21K10412
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Research Institution | Osaka Institute of Public Health |
Principal Investigator |
田丸 亜貴 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 主幹研究員 (70270767)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩本 朋忠 神戸市健康科学研究所, 感染症部, 所長 (70416402)
村瀬 良朗 公益財団法人結核予防会 結核研究所, 抗酸菌部 結核菌情報科, 科長 (80535998)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 結核菌 / ゲノム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、結核感染経路の結核菌ゲノム情報からの判定を目的とする.そのために,種々の発生規模や発生間隔の結核集団感染事例から分離された結核菌株を全ゲノム比較解析し、日本の結核菌株間の疫学的関連を判別する「ゲノム変異の閾値」を明らかにする. 2021年度は,まず同一結核菌由来の結核菌株群の選定を行った.すなわち,研究者らが収集している集団感染由来結核菌株群・同一患者由来結核菌株群から,患者接触歴・発生歴および従来の遺伝子型別法により同一菌株由来であると判定された群を選別した.さらにゲノム変異の速度を調査するため,患者発生間隔が約2年以上の長期である群を選定し,本研究の対象とすることとした.対象菌株群のうち,家族内結核集団感染由来7群17株について,保存菌株を再培養してゲノムDNAを精製,イルミナMiSeqにより全ゲノムリードを取得し,解析パイプラインMTBseqにより全ゲノム一塩置換多型(SNV)解析を実施した.各集団感染群内のSNV数は4群で1個,2群で3個,1群で2個であった. SNV数と患者発生間隔は,SNV数 1個で1.8-8.1年,2個で6.2年,3個では5.6-6.8年であった.一年間に発生するSNV数は平均0.34個/genomeであった.これらの結果は海外の標準(疫学的関連のある結核菌株群内のSNV数は5以下,結核菌の変異速度0.3-0.5個 /genome/year)と一致していた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は家族内結核集団感染由来7群17株について全ゲノムSNP多型解析を実施し,海外での標準と一致した結果が得られたが,対象として選別した同一菌株由来結核菌株群は80群190株以上あり,ごく一部の結果しか確認できなかった.その原因は,古い結核保存菌株の一部が発育しなかったこと,新型コロナウイルスのゲノム解析需要数が非常に多く結核菌のゲノムリードが取得し難かったこと,研究代表者が研究機器故障対応に追われたこと,などであるが,2022年度以降は改善の見通しができている.
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度に選別した結核菌株群を主として,続発患者数が5名を超える大規模な集団感染,感染経路が複雑なケース(初発患者が再発後に続発患者に感染、集団感染後に初発患者が再発、など)由来の菌株など,できるだけ多くの同一菌株由来結核菌群の全ゲノムリードを取得し,全ゲノムSNP解析し、結核菌集団感染で起こりうるSNPその他ゲノム変異を調べる。さらに日本では疫学的関連がないが同一遺伝子型を示す広域多発株が多数存在する。広域多発株と同一遺伝子型の集団感染事例由来株の全ゲノムSNP解析結果を比較し、日本での結核菌の関連性の有無を判別する「変異の閾値」を明確にする。
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Causes of Carryover |
2021年度は予定していた菌株数のゲノム解析ができなかったため. 2021年度未解析の菌株については2022年度に実施する予定である.
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