2022 Fiscal Year Research-status Report
日本の結核菌株間の疫学的関連を判別するためのゲノム変異の閾値の解明
Project/Area Number |
21K10412
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Research Institution | Osaka Institute of Public Health |
Principal Investigator |
田丸 亜貴 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 主幹研究員 (70270767)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩本 朋忠 神戸市健康科学研究所, 感染症部, 部長 (70416402)
村瀬 良朗 公益財団法人結核予防会 結核研究所, 抗酸菌部 結核菌情報科, 科長 (80535998)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 結核菌 / 結核感染源調査 / 結核菌全ゲノムSNPs解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究では、結核感染経路の結核菌ゲノム情報からの判定を目的とする.そのために,種々の発生規模や発生間隔の結核集団感染事例から分離された結核菌株を全ゲノム比較解析し、日本の結核菌株間の疫学的関連を判別する「ゲノム変異の閾値」を明らかにする. 2022年度は昨年度に引き続きゲノム変異の速度を調査するため、患者発生間隔が約2年以上かつVNTR型別で同一感染源由来と判定された集団感染由来結核菌株11群22株・同一患者由来結核菌株4群8株の全ゲノムSNPs解析を実施した。 【方法】 保存菌株を再培養してゲノムDNAを精製,イルミナMiSeqにより全ゲノムリードを取得し,解析パイプラインMTBseqにより全ゲノム一塩置換多型(SNV)解析を実施した. 【これまでの結果】 昨年度に実施した7群17株のデータも併せると、各群内のSNV数は0個が6群(2~9年), 1個が7群(2~8年), 2個が3群(3~6年)、3個が3群(6~9年)、4個が1群(3年)、5個が1群(6年)、6個が1群(10年)であった[()内は患者発生間隔]。一年間に発生するSNV数は平均0.34個/genomeで海外での報告(結核菌の変異速度0.3-0.5個 /genome/year)と一致していた.海外の標準では疫学的関連のある結核菌株群内のSNV数は5以下とされているが、6個の変異が見られた群があった。この事例は初回発症から10年後に再発した同一患者由来事例で、VNTR型は同一で同一菌株と考えられた事例であった。同一感染源由来あるいは同一菌株でSNV数が5個を超える事例の発生頻度について次年度以降さらに調査する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度に比べて解析数を増やすことができ、おおむね海外での標準と一致した結果が得られたが、2021年度に選別した結核菌株群すべてを解析することができなかった。これは2022年12月から2023年1月にかけて主担研究者の施設移転があった影響である。 2023年度には解析数をさらに増やせる見込みである。2022年度に解析した群の中に同一菌株でSNV数が6個ある事例がみられた。この事例は患者発生間隔が10年と長期であったので、そのためSNV数が多くなった可能性があるが、ゲノム解析のデータをみると1か所のSNPでCoverageがやや低く、SNPs解析の方法が影響している可能性もある。次年度は解析方法の部分も含めて検討する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度に選別した結核菌株群を主として,続発患者数が5名を超える大規模な集団感染,感染経路が複雑なケース(初発患者が再発後に続発患者に感染、集団感染後に初発患者が再発、など)由来の菌株など,できるだけ多くの同一菌株由来結核菌群の全ゲノムリードを取得し,全ゲノムSNP解析し、結核菌集団感染で起こりうるSNPその他ゲノム変異を調べる。さらに、同一感染源由来あるいは同一菌株でSNV数が5個を超える事例の発生頻度、解析方法による結果の相違の有無について調査し、日本での結核菌の関連性の有無を判別する「変異の閾値」を明確にする。その後、広域多発株(日本に多く存在する疫学的関連がないが同一遺伝子型を示す菌株群)と同一遺伝子型の集団感染事例由来株の全ゲノムSNP解析結果を比較し、地域分子疫学対象株から集団感染群を発見する方法を模索する。
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Causes of Carryover |
2022年度に予定していた菌株数のゲノム解析ができなかったため。 解析未実施株については本年度解析する予定である。
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