2022 Fiscal Year Research-status Report
中部アフリカにおいて蚊媒介性ウイルスの感染拡大を誘発し得る野生動物宿主の同定
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21K10415
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
阿部 遥 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (90554353)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アフリカ / ガボン / 野生動物 / 蚊媒介性ウイルス / メタゲノム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ガボン共和国において採取した野生動物検体を用いてメタゲノム解析によりウイルスゲノムの網羅的検出を試みた。ダイカー、ヤマアラシ、げっ歯類などおよそ400個体から各種臓器を採取し核酸抽出後に次世代シークエンス解析を行った。その結果、いくつかの検体からデングウイルスを含む蚊媒介性ウイルスを検出し、また肝炎ウイルスやオルソナイロウイルスなど多数のウイルスを検出した。検出した蚊媒介性ウイルスのいくつかについてはサンガー法シークエンス解析を組み合わせることで全長ゲノム配列を取得した。特に、全長配列が得られたフラビウイルスの一つはBLAST解析によりヒトで病原性が報告されている種とゲノム配列の相同性が高いと判明したが、フラビウイルスにおいて同種とみなす基準である84%よりは相同性が低かったため、新種のフラビウイルスであると考えられた。従って、このフラビウイルスはヒト病原性が十分に想定される新種の蚊媒介性ウイルスであるという結論に至った。これらの研究成果から、ガボンの野生動物が有するウイルスの人獣共通感染症としてのヒト感染リスクが存在することを明らかにした。今後、野生動物検体から同定した蚊媒介性ウイルスの詳細な系統樹解析により、ガボンの野生動物内におけるウイルス維持・循環機構を推定するとともに、ウイルス表面抗原精製タンパク質を用いてヒト検体での血清学的調査を進めることでこれまでのヒト感染の発生の有無を確認する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次世代シークエンサーを用いた野生動物検体の解析が本年度でほぼ終了し、計画通り順調に進展している。また、いくつかの検体から蚊媒介性ウイルスゲノムを検出し、かつサンガー法を組み合わせることで全長配列を取得できたウイルスもあり、ガボン共和国の野生動物における蚊媒介性ウイルス感染状況およびウイルスの系統学的特徴が初めて明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
メタゲノム解析により検出された蚊媒介性ウイルスの系統樹解析を詳細に行うことで、ウイルスの由来やガボン国内への侵入時期を推定する。また、ヒト検体を用いた血清学的調査を行い、ヒトが野生動物由来ウイルスに感染した履歴を調査し人獣共通感染症リスクを明らかにする。
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Causes of Carryover |
本年度は他業務におけるガボン渡航の直後に本研究活動による検体採取・解析作業を行ったため、研究活動は制限されることなく旅費の支出を抑制することができた。次年度においては試薬を追加購入することで、1検体でも多くのウイルスゲノムをシークエンスする。
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