2021 Fiscal Year Research-status Report
埼玉県内の臨床および下水から分離したESBL産生大腸菌の解析
Project/Area Number |
21K10418
|
Research Institution | Saitama Prefectural University |
Principal Investigator |
岸井 こずゑ 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 准教授 (10629570)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | One health approach / 下水流入水 / 臨床由来株 / ESBL産生大腸菌 / blaCTX-M-9 group / blaCTX-M-1 group |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、埼玉県内の環境及び臨床由来ESBL産生 E. coliを対象として薬剤感受性試験、耐性遺伝子解析及び全ゲノム解析を行い、各分野の薬剤耐性の状況や相互の関係性を明らかにすることを目的とする。本年度は、2020年10月より10, 12, 2, 4, 6, 8月の計6回、下水処理場(埼玉県 中川循環センター)の流入水2Lを採取し、ESBL産生Escherichia coli 23株を分離した。臨床由来ESBL産生 E.coliについては、当該下水処理場の流域下水道処理区域内の病院から同時期に分離された55株がいかなる患者情報も伴わない形で分与された。これらの下水由来株と臨床由来株を対象として薬剤感受性試験および薬剤耐性遺伝子検出を実施した。TEM型, CTX-M-1group, CTX-M-9group, SHV型, CTX-M-2group, CTX-M-8groupを標的遺伝子とするコロニーダイレクトMultiplex PCR法により遺伝子型の簡易型別を行った結果、下水由来株については、CTX-M-9groupが最も多く52.2% (12/23株)、次いでCTX-M-1groupが39.1% (9/23株) であった。臨床由来株についても同様にCTX-M-9groupが最も多く63.6% (35/55株)、次いでCTX-M-1groupが32.7% (18/55株) であった。詳細な遺伝子型を決定していないため、正確な判断はできかねるが、臨床で感染症を起こした菌株と同様の薬剤耐性遺伝子型を保有するESBL産生 E. coliが環境にも出回っている可能性が示唆された。詳細な遺伝子型を決定し、さらにMLSTによる菌株の系統解析を進めていく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画した2021年度の課題は「対象菌の分離・同定および薬剤感受性試験 / 薬剤耐性遺伝子解析」である。そのうち、対象菌の分離・同定および薬剤感受性試験については計画通り進めることができた。しかし、薬剤耐性遺伝子解析については、2021年度のコロナ禍において研究施設への入館制限等により、十分な研究活動が行えなかったこともあり、簡易型別により検出された薬剤耐性遺伝子(blaCTX-M genes)について、塩基配列を決定し詳細な遺伝子型を決定することができず課題として残った。以上のことから、やや遅れていると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
まずは、簡易型別により検出された薬剤耐性遺伝子(blaCTX-M genes)について、塩基配列をシークエンス解析により決定し、詳細な遺伝子型を決定する。次に、当初計画した2022年度の課題であるMLST解析を行いsequence type (ST)を決定する。さらに、菌株間の関連性についての情報を得るためにeBURST解析を行う。この段階までに得られたデータをもとに論文化を検討する。次いで、2023年度に実施予定である比較ゲノム解析の対象となる各STの代表株を選定していく
|
Causes of Carryover |
(理由)2021年度のコロナ禍において研究施設への入館制限等により、十分な研究活動が行えなかったこともあり、薬剤耐性遺伝子の簡易型別により検出された薬剤耐性遺伝子(blaCTX-M genes)について、塩基配列を決定し詳細な遺伝子型を決定することを実施できなかったため。 (使用計画)次年度請求額と合わせて、薬剤耐性遺伝子(blaCTX-M genes)の塩基配列をシークエンス解析により決定し詳細な遺伝子型を決定することを中心に使用する予定である。
|
Research Products
(2 results)