2022 Fiscal Year Research-status Report
埼玉県内の臨床および下水から分離したESBL産生大腸菌の解析
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21K10418
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Research Institution | Saitama Prefectural University |
Principal Investigator |
岸井 こずゑ 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 准教授 (10629570)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | One health approach / 下水流入水 / 臨床由来株 / ESBL産生大腸菌 / blaCTX-M-27 / ST131 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、埼玉県内の環境及び臨床由来ESBL産生Escherichia coliを対象として薬剤感受性試験、耐性遺伝子解析および全ゲノム解析を行い、各分野の薬剤耐性の状況や相互の関係性を明らかにすることを目的とする。本年度は、埼玉県内の下水処理場流入水(2020年10, 12月, 2021年2, 4, 6, 8月採水)より分離したESBL産生E. coli 30株および当該下水処理場の流域下水道処理区域内の病院から同時期に分離された臨床由来ESBL産生 E. coli 55株の詳細なCTX-M遺伝子型を決定し、さらにMLSTによる菌株の系統解析を進めた。CTX-M遺伝子型については、臨床由来株ではCTX-M-27(44.4%)が最も多かったが、下水由来株ではCTX-M-15(30.0%)やCTX-M-14(23.3%)がCTX-M-27(20.0%)よりも多く検出された。MLST型については、臨床由来株のSTはST131が81.5%を占め、圧倒的に高い割合となった。ST131に次いで多く見られたSTは、近年徐々に増加傾向を示すハイリスククローンとして報告されているST1193(5.6%)であった。一方、下水由来株のSTにおいては、ST131(26.7%)が最多、次いでST1193(16.7%)が多く見られたが、臨床由来株に比べてST1193の占める割合が高い結果となり、他にも非常に多種類のSTが検出された。いくつかのSTがCCとしてまとめられたが、独立性の高いSTが多く、臨床由来株に比べてバリエーションに富んでいた。起源が多様なため、臨床では見られていないクローンも含め網羅的に検出された可能性が示唆される。今後は、下水および臨床から分離されたESBL産生E. coliの中から各STの代表株を選び、既に全ゲノム配列が決定している基準株を含めた比較ゲノム解析を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度からの持ち越し課題として簡易型別により検出された薬剤耐性遺伝子(blaCTX-M genes)の詳細な遺伝子型の決定を抱えていたが、当初計画した2022年度の課題である「MLST解析」まで進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに公開されているESBL産生E. coliのゲノム配列のうち、手始めに全配列が完了している株について薬剤耐性遺伝子および遺伝子伝播に関与する遺伝子をリストアップし比較する。さらに下水および臨床から分離されたESBL産生E. coliの中から各STの代表株を選び、全ゲノムシークエンスを行う。基準株のみならず、下水および臨床由来株における薬剤耐性遺伝子や遺伝子伝播に関与する遺伝子の保有・変異状況を調査する。加えて、各STの起源についても基準株の情報を基に明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
2021年度のからの持ち越し額があり、また当初計画では2021年度に購入予定としていた配列情報マルチ解析ソフトウェア(Geneious)を購入出来ていないことも理由としてあげられる。 2023年度は、全ゲノムシークエンス決定のための次世代シークエンサーによる解析を中心に使用する予定である。また、比較ゲノム解析を実施する上で配列情報マルチ解析ソフトウェアが必須となってくるため、当該ソフトウェアを購入予定である。
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