2022 Fiscal Year Research-status Report
脂肪性肝炎の進展における炎症メディエーターに対する亜鉛制御の解明
Project/Area Number |
21K10421
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Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
吉岡 亘 麻布大学, 獣医学部, 准教授 (80425496)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 亜鉛 / 肝 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は亜鉛欠乏が肝炎の増悪因子になる可能性についてマウスモデルを用いて検討するものである。これまでに、食餌性の脂肪肝と薬剤誘導性の亜鉛欠乏の2つの条件について、個別にまたは重ね合わせて、マウスを用いた実験モデル作ったところ、本研究の実験条件においては影響が相加的には表れないことが判明した。そこで、亜鉛欠乏が肝臓において炎症関連因子をどのように変化させるかということに焦点を当てることとして、薬剤誘導性の亜鉛欠乏モデルマウスにおける遺伝子発現変化と関連の変化について実験研究を実施した。その結果、亜鉛欠乏によって、カルプロテクチンの両サブユニットのmRNAならびにタンパク質の量が増加することを見出した。カルプロテクチンの発現が多い炎症性細胞として好中球を候補に挙げて免疫組織学解析をおこない、好中球の増加を確認できた。続いて、炎症性細胞の走化因子の探索のために遺伝子発現解析をおこない、mRNA量の増加しているケモカインを発見した。これらの結果は、亜鉛欠乏マウスモデルにおいて、好中球の肝臓中への浸潤に伴う炎症関連分子の増加が生じていることを示している可能性がある。炎症の初期あるいは前段階の反応が亜鉛欠乏によって生じたことから肝炎の発症や進展を引き起こす機序となる可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
亜鉛欠乏モデルマウスの実験研究によって肝臓において炎症に関連する遺伝子の発現増加ならびに関連の炎症性細胞について手がかりが得られた。これらの結果はRNAレベルのみならずタンパク質レベルで明らかにできており、また、一連の変化として理解できる結果であることから、確からしい結果を得たと考えられる。加えて、この一連の変化を引き起こしたと考えられる上流の変化についても手掛かりを得ており、さらなる進展が見込まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに見出した炎症関連の諸変化と亜鉛欠乏の関係をよりはっきりさせるために亜鉛投与によるレスキュー実験を実施する。また、薬剤投与による亜鉛欠乏モデルに加えて食餌性の亜鉛欠乏モデルを作成して解析することで、結果の普遍性に関する検証をおこなう。これらの実験研究によって結果の位置づけを明らかにするとともに、これまでに未検討の関連因子について分析することで、亜鉛欠乏による肝での影響の広がりについて解明する。さらに、全身性の影響との関係についても検討する。
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Causes of Carryover |
予定していた動物実験を次年度に先送りし、次年度に予定していた採材した試料の分析を先に実施することで、効率的な研究遂行が可能になる状況となった。これらの変更に伴い結果として次年度使用額が生じた。次年度使用額については先送りした動物実験を実施するための費用とする。
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