2023 Fiscal Year Annual Research Report
無機ヒ素とマンガンの複合暴露による脳神経細胞障害における相互作用の解明
Project/Area Number |
21K10422
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
人見 敏明 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 准教授 (90405275)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高田 礼子 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (30321897)
山内 博 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (90081661)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ヒ素 / マンガン / 複合暴露 / 血液脳関門 / 認知能力障害 / 小児 / 成人 |
Outline of Annual Research Achievements |
自然由来の無機ヒ素(iAs)による飲料水汚染からアジアや中南米諸国では大規模な慢性ヒ素中毒が発生しており、小児の認知能力の障害や成人における認知機能障害も顕在化している。そして、非ヒ素汚染地域においても日常の食事からのiAs摂取による小児の認知能力の障害が問題となっている。一方、慢性ヒ素中毒の発生地域では飲料水のiAs汚染にマンガン(Mn)が共存する複合暴露が存在する。従来より、Mnの過剰暴露からの小児の認知機能や運動障害、また、成人でも運動機能障害、パーキンソン病が知られている。しかし、疫学調査から示唆されるiAs、MnおよびiAsとMnの複合暴露からの脳機能障害について実験的な証明はなされていない。 我々は、iAs暴露による認知能力への影響や認知機能障害は、最初に血液脳関門(Blood Brain Barrier: BBB)のタイトジャンクション(TJ)傷害が発生し、BBBを透過したiAsやその代謝物によりグリア細胞そして神経細胞が段階的に傷害される作用機序を考えている。一方、MnはiAsより脳組織に移行する可能性が高いが、BBBのTJに対する詳細な機序は不明であり、さらに、iAsとMnの複合暴露条件下における情報は得られていない。 本研究では、ヒトの BBBの構造を模範したrat in vitro BBBシステムを用いて、iAs、MnおよびiAsとMnの複合暴露条件下におけるBBBのTJ障害について経内皮電気抵抗(TEER)値を主体として検証を行った。本研究から、iAs暴露によるBBBのTJ傷害はTEER値の測定から明確に評価でき、濃度依存的にTJ傷害が発現した。これに対して、MnのBBBのTJ傷害は比較的弱く、しかし、iAsとMnの複合暴露条件下ではiAs単独暴露より強いTJ傷害を確認し、複合暴露の研究の重要性を明らかにした。
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