2021 Fiscal Year Research-status Report
生活習慣病におけるメタロチオネインの役割解明:新たな治療戦略の構築を目指して
Project/Area Number |
21K10424
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
川上 隆茂 徳島文理大学, 薬学部, 講師 (40441589)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | メタロチオネイン / 亜鉛 / 脂肪肝 / 耐糖能異常 |
Outline of Annual Research Achievements |
【背景・目的】メタロチオネイン(MT)は亜鉛により誘導され、生理的役割として細胞内における亜鉛や銅などの必須金属の代謝調節機能を有するが、MT遺伝子欠損条件における生活習慣病発症に対する亜鉛の効果の程度については不明な点が多い。本年度では、野生型(WT)およびMT欠損(MTKO)マウスを用いて、高脂肪食(HFD)誘導性の生活習慣病に対する亜鉛の抑制効果とそれに対するMTの寄与について検討した。 【方法】雄性8週齢のWTおよびMTKOマウスにHFDと亜鉛を含む飲料水(0、92および460 ppm)を10週間自由摂取させた。また、実験開始6週目に糖負荷試験を行った。肝臓の組織学的検索は、HE染色法により行い、亜鉛濃度はICP-MSを用いて測定した。脂質取り込みに関わる遺伝子(CD36およびVldlr)のmRNA発現量をRT-qPCR法を用いて解析した。 【結果・考察】①脂肪肝形成:WTマウスでは、亜鉛補充によるHFD誘発性脂肪肝の軽減が認められたが、MTKOマウスでは改善しなかった。②糖負荷試験:亜鉛補充したWTマウスでは、HFD誘発性の耐糖能異常が改善したが、MTKOマウスではその効果は乏しかった。③肝臓中亜鉛濃度:両系統マウスともHFD摂取により肝臓中亜鉛濃度の有意な減少が認められたが、その程度はMTKOマウスでより顕著であった。WTマウスは、亜鉛補充により正常レベルまで亜鉛濃度が回復したが、MTKOマウスでは回復しなかった。④RT-qPCR:MTKOマウスでは、HFDにより亢進したCD36(脂肪酸トランスポーター)およびVldlr(リポタンパク質受容体) mRNA発現量が亜鉛補充により低下した。このことから、亜鉛イオンは、MTを介さずに亢進した脂質取り込み関連遺伝子の発現量を低下させるが、HFDによる脂肪肝を完全に改善させるまでには至らないと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定である「野生型およびMT欠損マウスを用いた高脂肪食誘導性の耐糖能異常および脂肪肝発症に対する亜鉛効果の比較解析」において、1)肝臓および脂肪細胞の組織学的解析、2)耐糖能の比較解析、3)肝臓および血漿の金属濃度測定、4)脂肪取り込み関連遺伝子mRNA発現量を解析することができた。しかし、トランスクリプトーム解析は達成できなかったため、進捗状況はやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画(2年目)に沿って、「脂肪肝形成後に対する亜鉛の改善作用の可能性とMTの関与」および「肝細胞の脂肪蓄積に対するMT-IおよびMT-IIの寄与」を中心とした解析を行う。具体的には、脂肪肝を形成させた野生型およびMT欠損マウスに亜鉛を投与し、病態が改善するか比較検討する。また、マウス肝細胞株(AMT-12)を用いてMT遺伝子の脂肪肝形成に対する寄与を解析する。
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Causes of Carryover |
(理由)当初予定していたトランスクリプトーム(マイクロアレイ)解析ができなかったためである。 (使用計画)本年度は、野生型マウスおよびMT欠損マウスに亜鉛処理した肝臓からトランスクリプトーム(マイクロアレイ)解析を行う予定である。また、血清パラメータ解析(インスリン、レプチン、アディポネクチンなど)、リアルタイムPCR解析関連試薬(酵素、プライマーなど)、細胞培養実験試薬(肝細胞培養培地、オレイン酸など)、高脂肪食等の購入を行う予定である。
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Research Products
(3 results)