2021 Fiscal Year Research-status Report
住宅内装材から放散されるアレルギー誘因化学物質の曝露指標の確立と子どもの曝露実態
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21K10431
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Research Institution | Osaka Institute of Public Health |
Principal Investigator |
吉田 俊明 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 衛生化学部, 主任研究員 (00201856)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | テキサノール / TXIB / 尿中代謝物 / ラット / ガスクロマトグラフィー/質量分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
建材等への使用量が近年増加している2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート (TMB) および2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレート (TDB) は、アトピー性皮膚炎等アレルギー性疾患との関連性が疑われるとともにシックハウス症候群の原因となる化学物質である。本研究では、これら化学物質による子どもの健康被害の防止を目指し、日常生活環境下の子どもにおけるこれら化学物質の一日の摂取量を尿中に排泄されるこれらの代謝物量から把握することを目的とする。 令和3年度は、TMBおよびTDBの摂取量の指標となり得る尿中代謝物を検索するためにTMBおよびTDBの各尿中代謝物を解明し、その分析法を確立した。 TMBまたはTDBの一定量を別々にラットに投与後、尿中に排泄されるこれらの複数の各代謝物をガスクロマトグラフィー/質量分析 (GC/MS) により同定した。いずれの物質を投与したラットにおいても2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール (TMPD) および3-ヒドロキシ-2,2,4-トリメチル吉草酸 (HTMV) が主要な尿中代謝物であった。さらに、これら2種の代謝物のGC/MSによる定量方法を検討した。各代謝物は、酵素 (β-グルクロニダーゼおよびスルファターゼ) により抱合を加水分解したのち、酸性下トルエンで抽出した。その後、代謝物を誘導体化 (tert-ブチルジメチルシリル化) し、内部標準法により定量した。各代謝物の検量線の直線性は良好であり、尿中濃度300μg/L以下の代謝物を正確かつ再現性よく定量することが可能であった (検出下限濃度:0.3μg/L)。また、採取した尿試料は、一ヶ月間冷凍庫で保存が可能であった。本分析法は、子どもにおけるTMBおよびTDBの吸収量を評価するために十分適用できるものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究のエフォートが概ね計画通りであった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度以降、TMBおよびTDBの体内動態を解明し、それぞれについて、吸収量の指標として適する代謝物 (TMPDかHTMVのいずれか) を決定する。さらに、日常生活環境下の子どもにおけるTMBおよびTDBの曝露調査を実施し、その実態を把握する。 TMBまたはTDBの一定量 (4種の投与量レベルで試験) をラットに投与したのち、排泄される尿を経時的に1週間採取する。すでに同定された2種の代謝物TMPDおよびHTMVを、これまでに確立した方法により定量し、各投与物質について、その体内動態を解明する。TMB、TDBそれぞれについて、広範な投与量レベルにおいて投与量とその排泄量との間に比例関係があり、尿中への排泄率が高い代謝物を曝露の指標となり得る指標代謝物として選定し、その尿中排泄率を算出する。 本調査への協力者 (大阪府在住) を募り、研究代表者の所属する機関の倫理審査委員会にて既に承認された手法に従い、子どもを対象とした調査を実施する。対象者 (小学生) の登校日に、対象者から、翌朝まで外出が見込まれない最終帰宅時と翌朝起床時の尿を採取する。採取した尿試料中のTMBおよびTDBの各指標代謝物を、これまでに確立した方法により分析する。さらに、各指標代謝物の尿中排泄率に関する上記動物実験の結果から、各対象者について在宅中と一日のTMB、TDBの摂取量を算出する。
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Causes of Carryover |
2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレートおよび2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレートの尿中代謝物の分析法に関する論文を海外学術雑誌に投稿し、オープンアクセス費を計上していたが、本成果を代表研究者の所属する機関の研究報告に投稿したことが、令和4年度使用額が生じた主要な理由である。 令和4年度は、動物実験に使用するラット購入費、調査に要する試料捕集関連消耗品、試料分析関連消耗品の購入、調査協力者への謝金のほか、研究成果発表のための学会旅費、論文校閲・投稿料等に予算を充当する計画である。
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Research Products
(4 results)