2022 Fiscal Year Research-status Report
Exploring the genetic marker of M. tuberculosis to predict the transmissibility and latency
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21K10433
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Research Institution | Kobe Institute of Health |
Principal Investigator |
岩本 朋忠 神戸市健康科学研究所, 神戸市健康科学研究所, 所長 (70416402)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 結核菌 / 全ゲノム解析 / 比較ゲノム / 分子疫学 / 遺伝系統解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
結核菌感染後の発病様式を予測する結核菌遺伝マーカーの探索における基盤データとなる遺伝系統間の感染動態の異質性の解明を目指した。神戸市で2016-2018年の3年間に新規登録された培養陽性結核患者の87%をカバーする結核菌550株の全ゲノム解析を行い、Lineage 2の亜株間の感染動態の異質性をゲノムクラスターの形成率、terminal branches length (TBL)分布、および患者背景(年齢、性別、出生国)の側面から評価し、下記の知見を得た。また、本研究により、研究計画時の菌株選定論拠に用いた遺伝型別解析法では同一クローンによる感染拡大を正確に識別することが困難であることが分かった。 1)日本固有のL2.2.A亜系統は、主として高齢患者の長期潜伏からの再活性化による発病で占められており、最近の感染伝播による発病は限定的であった。 2)世界的な感染拡大株であるL2.2.Modern亜系統は、他の系統よりも若年層や外国生まれの患者との関連が強い。L2.2.ModernのTBL分布は2峰性であり、最近の感染による発病とコミュニティからの頻繁な出入りの2面性を示唆するものであった。感染伝播力の高いL2.2.Modern系統の高齢者への感染拡大を最低限にとどめることが、公衆衛生的な結核対策上の優先事項となる。 3)L2.2.AA2、L2.2.AA3.1、L2.2.AA3.2は、異なるSNP閾値で連続的にクラスター率が上昇しており、長期間にわたる連続的な感染が地域内で維持されていることを示唆する。集団における特定のクローン/菌株からの子孫の拡大、すなわち、流行株の拡大という潜在的なリスクとなりうる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナ感染症対応業務に追われ、本研究において重要な2019年以降の分離菌株のゲノム解析が予定通り進まなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究を進める中で、研究計画時の菌株選定論拠に用いた遺伝型別解析法では同一クローンによる感染拡大を正確に識別することが困難であることが分かった。 既報のゲノムデータを積極的に活用することで、当初目的に合致した感染拡大株と長期休眠株のサンプルセットを十分に確保できる見通しが立ったので、R5年度は引き続き2019年以降の分離株のゲノム解析を行うとともに、ゲノムワイド関連解析へと展開する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は新型コロナ対応のため、当初予定していた頻度での次世代シーケンサーによる解析を行うことが出来なかった。物品費の多くをゲノム解析用に計上していたため、当年度での使用額が予定を下回った。 また、新型コロナ感染症パンデミックのため、各種学会や研究会がweb開催となったため、旅費が発生しなかった。
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