2021 Fiscal Year Annual Research Report
医療用ビッグデータを用いた本邦における抗がん剤治療後の心血管疾患発症の実態解明
Project/Area Number |
21K10458
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
野原 正一郎 久留米大学, 医学部, 助教 (20647812)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 一夫 公立諏訪東京理科大学, 工学部, 教授 (60449238)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 抗がん剤 / 心不全 / ビッグデータ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は医療用ビッグデータを用いて、本邦における抗がん剤治療後の心血管疾患の実態について明らかにすることである。メディカル・データ・ビジョン(MDV)社が保有するデータベースを用いて、2008年4月~2017年1月までに抗がん剤が投与され、且つ登録より前180日間以内にがんに関連する受診歴がない症例を抽出したところ、対象患者は190,645名となった。 まず、全がん患者197,645人において、A)病名情報データベース、B)薬剤情報データベース、C)入退院情報データベースに関してデータ抽出を行った。データベースの構築後、1)がんの疑い病名、2)2008年3月以前にがん病名を有するもの、3)2008年3月以前に抗がん剤投与歴のあるもの、4)観察期間内に抗がん剤投与が確認されなかったもの、5)18歳未満を除外した結果、最終的な解析対象患者数は140,327人となった。 本研究では、初回抗がん剤投与日をエントリー日として全140,327人についてエントリー時の背景因子やがん病名、及び併存疾患の抽出を行った。結果、平均年齢は69.2歳(うち75歳以上:36.2%)、男性は59.0%、喫煙歴は51%であった。併存疾患については高血圧症:39.9%、虚血性心疾患:14.1%、心房細動:6.0%、糖尿病:30.2%と心血管疾患、動脈硬化疾患を多数認めていた。 次に抗がん剤投与後の心不全発症率を評価したところ3.9%(5,093名)であった。心不全発症が予後へ与える影響を検討した結果、全患者の5年間の院内生存率は70.1%、また心不全群:53.0%、非心不全群:73.0%と心不全群は非心不全群と比較して有意に院内生存率が低かった(p<0.01)。Cox比例ハザードモデルによる解析の結果、高齢、虚血性心疾患や心房細動、高血圧症といった心血管疾患、および糖尿病や脂質異常症といった動脈硬化疾患が抗がん剤発症後の心不全発症と有意に関連していた。機械学習による決定木分析(CART)では、これらのリスク因子は年齢別に異なる複雑なリスク構造を構築していた。
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