2022 Fiscal Year Research-status Report
ヒト移動数理モデルを利用した新型コロナウイルスのリスク評価手法の確立
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21K10467
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小林 鉄郎 京都大学, 医学研究科, 助教 (60809416)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ワクチン / 集団免疫 / 新型コロナウイルス / COVID-19 / 累積感染者数 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】2021年に日本政府が高齢者に優先して新型コロナウイルスワクチンの接種目標を掲げたことに伴い、原則2回接種とするワクチンを1回目接種にして、64歳以下の成人にまで広げることが有効かが議論された。 【方法】研究①では、ワクチン接種後の相対的な感受性低下を考慮し、年齢群別接触行列を用いて、各年齢群における累積感染率および累積死亡者数を算出した。一方で研究②では、政府が掲げた一日100万本を高齢者及び成人に対して1回接種した戦略Aと、高齢者のみに対して2回接種完了し、後に成人に2回接種する戦略Bに対し、最終的な感染者数から、総死亡者数を計算した。 【結果】(研究①)日本国内全人口がワクチン未接種の場合、最終的に89.1%が感染を経験するが、高齢者2回接種では78.2%、高齢者1回接種にして残り半分在庫を成人1回接種に回した場合は、1回接種者の感受性が50%とするなら、78.3%と推定された。高齢者2回接種率30%、成人1回接種率100%を想定すれば54.6%にまで下がり、実効再生産数は2.50から1.12に低下すると推定された。(研究②)行動制限(public health and social measures: PHSM)の期間によって、戦略Aでは最終的に1,387,078~4,682,995人が感染すると予測され、総死亡者数は39,405~1,387,078人と見積もられた。一方で、戦略Bでは1,900,172~69,856,699人が感染し、総死亡者数は17,423~695,295人と見積もられた。 【考察】1回接種で接種範囲を拡大しても、2回接種のように効率よく死亡を防ぐことはできないが、PHSMなど社会的介入を組み合わせることで両者をより効率的に減少させることができることが示せた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記実績の通り進んでいる。現在は、次の研究に着手している。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の研究を進めている。 【目的】2020年初旬に発生した、新型コロナウイルスの集団感染について乗船客のデータを分析することで、疫学曲線を推定し、偽陰性者や検査前の感染者や自然治癒者を含んだ感染者数を含む、感染者総数の実際の値を推定する。 【方法】2020年2月5日より14日間、乗客2666人は各々の客室内で行動を制限され、濃厚接触者含め都度PCR検査が行われた。PCR検査の結果が判明している2595人の乗客のうち、572人が陽性、2023人が陰性であった。まず、個室および複数人部屋における隔離開始後の各日付の船内感染ハザードλ、そして高齢者および若年者における感染時の発症リスクpを定義し、コンパートメントモデルを用いて、PCRの結果および症状の有無についての実データに当てはめてパラメータの最尤推定をする。これにより、各日付で実際に何人が感染していたのかを推定し、うちPCR陰性者のうち偽陰性および自然治癒により未診断となった感染者数から、感染者総数を推定する。 【結果・考察】現在進行中
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Causes of Carryover |
必要書籍およびワークステーションや周辺機器などを揃えて解析の作業を予定していたが既存のワークステーションでも十分に対応できたため、次年度持ち越しとなった。今後の解析をするにあたり、新たなワークステーション購入が必要になる可能性が生じているため、予定通りの予算を使用することになると考えられる。
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