2021 Fiscal Year Research-status Report
Proteomic Signatures for Osteosarcopenia
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21K10505
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大澤 祐介 慶應義塾大学, 健康マネジメント研究科(藤沢), 准教授 (20621204)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | GDF-15 / プロテオミクス / 骨密度 / 縦断研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨密度および筋肉量の低下が合併したオステオサルコペニアは、骨粗鬆症またはサルコペニア単独と比較して、総死亡率をはじめとする健康関連のアウトカムと強く関連するが、その機序や早期発見に寄与するバイオマーカーは確立していない。さらに、骨密度・筋肉量の低下それぞれに関連するバイオマーカー自体、十分に解明されていない。令和3年度は骨密度の低下に関連するバイオマーカーに着目をした。予備研究では1301種の血漿中のタンパク質のうち、幅広い加齢関連疾患において多面的な役割を担うGDF-15が骨減少症を予測するバイオマーカーとして有力である可能性が示唆された。 そこで、InCHIANTI研究対象者596名(年齢65-94歳、女性52.4%、平均追跡期間7.0±3.0年)において、9年間の追跡期間における血漿GDF-15レベルと骨パラメーターの変化率との関係を検討した。血漿GDF-15濃度の測定には1.3k HTS SOMAscanを用いた。pQCTにより右脛骨における全骨密度、海綿骨密度、髄質+海綿骨密度、皮質骨密度、全骨面積、皮質骨面積、髄質骨面積、最小慣性モーメント(mMOI)の計8つの骨パラメーターを測定した。統計解析は、年齢、年齢二乗、教育歴、BMI、体重変化率、喫煙、身体不活動、ふくらはぎの筋肉と脂肪の断面積、25(OH)D、副甲状腺ホルモン、カルシウム、糖尿病の有無、追跡期間で調整した男女層別線形混合効果モデルを使用した。女性の皮質骨密度およびmMOIの変化を予測するモデルにおいて、「GDF-15*時間」の有意な関連を認め、GDF-15濃度が高いほど、これらの骨パラメータの低下率は増大した(false discovery rate <0.05)。本研究から血漿中GDF-15濃度が高いほど、女性では骨パラメータの減少が加速されることが予測されたが、男性ではあまり関連性がなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、米国の地域住民を対象にした前向きコホート研究であるBaltimore Longitudinal Study of Aging (BLSA)およびイタリアの地域住民を対象にした前向きコホート研究であるInCHIANTI研究参加者を対象にサルコペニアと骨減少症が併存するオステオサルコペニアに関わるバイオマーカーを探索することを目標としている。 令和3年度は、研究開始前に設定した4つの研究課題のうちの1つに着手した。研究開始前の段階では、米国メリーランド州に所在するNational Intstitute on Agingに訪問して研究に取り組む予定だったが、新型コロナウィルスの感染状況を踏まえて渡米を断念して、他の研究課題から取り組んだ。また、研究開始前には骨密度と筋肉量の低下に共通するバイオマーカーを探索することを目標としたが、予備解析の結果から骨密度と筋肉量の低下に共通するバイオマーカーを探索する前に、海綿骨や皮質骨など複数の骨パラメーターの低下に共通して関連するバイオマーカーの探索をする必要性を認識したため、研究計画を修正して取り組んだ。当該研究の成果は、老年医学系の国際誌に掲載された(Osawa et al. Journal of Gerontology Series A, 2022)。同様に、筋肉量の低下に関しても、全身の筋肉量のみでなく、部位別でみた筋肉量の低下に関わるバイオマーカーの探索をする必要があり、筋肉量の低下に関しては令和4年度に取り組む予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は、以下の2つの研究課題に取り組む予定である。1つ目は、骨格筋量の低下に関わるバイオマーカーの探索をInCHANTI研究のデータを用いて取り組む。また、本研究で得られた結果が他の集団においても同様の結果が得られるかを検証するため、米国BLSA研究のデータを用いて検討を行う。 骨と筋肉はクロストークをして双方の形質が変化をすると考えられているが、長期間の縦断データに基づく両者の経時的な相互関係は明らかではない。そこで、2つ目の研究として、老化によって両者の相互関係は強まるのか、 または弱まるのかなどを検討するため、BLSA研究および国立長寿医療研究センターが実施するNILS-LSAのデータを用いて骨密度と骨格筋量の低下の関連の強さを検討するとともに、国・人種が異なる集団においても同様の結果が得られるかを検討する。新型コロナウィルス感染症の状況を踏まえながら、米国メリーランド州に所在するNational Institute on Agingおよび愛知県に所在する国立長寿医療研究センターにてデータ解析に取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
令和3年度に米国NIAに訪問して研究に取り組む予定だったが、日米における新型コロナウィルス感染症とワクチン接種状況を踏まえて渡米を断念したため、渡米および滞在にかかる費用として計上した研究費を使用しなかった。令和4年度では、新型コロナウィルス感染流行の状況を観察しつつ、渡米をして研究に取り組む予定である。
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