2022 Fiscal Year Research-status Report
長期的なアルコール摂取により誘発される突然死の法医学的診断法の確立
Project/Area Number |
21K10520
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
小澤 周二 藤田医科大学, 医学部, 講師 (20379944)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
越智 拓 藤田医科大学, 医学部, 講師 (70527704)
関島 秀久 三重大学, 医学系研究科, 助教 (60792447)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アルコール性突然死 / RNA-seq法 / オミックス解析 / 致死性不整脈 / マウス / 心筋培養細胞 / H9c2 |
Outline of Annual Research Achievements |
アルコールを長期間に渡り摂取し続けると致死性不整脈が惹起される。そのため、法医実務ではしばしば多飲者の突然死を経験する。しかし、その発症機構は未だに不明である。また、突然死の法医学的診断法を確立するために様々な手法が試みられて来たが、未だもって突然死の確実な法医学的診断法は確立されていない。我々は、アルコール性突然死の動物モデルとしてアルコール長期投与マウスの作成に取り組み、このモデルで心筋リモデリングが生じることで不全心となることを明らかにし、不全心によりアルコール性突然死すなわち致死性不整脈が惹起されることを明らかにした。そこで本研究では、本マウスモデルを用いてアルコール性突然死が惹起される機構の解明を試みている。 本研究では、アルコール長期投与マウスを用いて、心機能の解析を行うとともに、心機能に影響を及ぼす中心的役割を担う分子について解析を行っている。本年度は、初年度に判明した、7週齢のC57BL/6マウスに、水の代わりに20%エタノール水を16週間投与することでもたらされる不全心について、さらなる詳細な分析・検討を試みている。すなわち、摘出した心臓組織についてRNA-seq法を用いて遺伝子発現変動の網羅的な解析を行った。現在はその結果の解析を進めている段階であり、不全心を生じるための中心的役割を担っていると考えられるキー分子について、その候補分子の絞り込みを試みている。 今後は、絞りこんだ候補分子について、ウェスタンブロット法や免疫組織学的手法を用いて解析を試みるとともに、心筋培養細胞(ラット心臓由来H9c2株化細胞)を用いてさらなる解析も行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度には、長期のアルコール摂取が心機能に影響を及ぼしていることを生理学的検査で確認することができている。 本年度は、初年度中に明らかにした心機能への影響を引き起こすための中心的役割を担う分子の候補を絞り込みを進めるため、心臓組織についてRNA-seq法を用いて遺伝子発現変動の網羅的な解析を進めることができている。 したがって、初年度は当初の計画よりもやや遅れてはいたものの、本年度の研究成果としては、当初の計画と同様に進展し、最終年度に繋がる結果を得ることができている。 今後は、これまでに得られた結果を基に、さらなる詳細な解析を試み、アルコール性突然死ひいては致死性不整脈の発症機構を解明することを目指している。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度から継続して、長期のアルコール摂取による心機能への影響を生じるのに中心的な役割を担う分子の絞り込みを行い、それらの分子がどのように心機能へ影響を及ぼしているのかを解析する。それらの結果に基づいて、長期のアルコール摂取時の分子生物学的な影響を解明し、アルコール性突然死の発症機構の解明、ひいては現在では証明することの困難な致死性不整脈死の診断法の確立を目指している。
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Causes of Carryover |
令和4年3月、RNA-seq法の過程で、解析が想定以上に複雑であり、遺伝子発現変動の結果を得るために当初計画より時間が必要となった。 しかしながら、本年度の研究成果としては、最終年度に繋がる結果を得ることができており、最終年度に当初の計画に沿った研究の遂行が施行できる予定である。
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