2021 Fiscal Year Research-status Report
死体体液中のexosome内包miRNA解析を用いた死因解明への実験的検証
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21K10526
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
菅野 さな枝 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 准教授 (50391090)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | エクソソーム / 死因解明 / miRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
Exosomeは、細胞から分泌されるナノサイズ(直径50-150 nm)の細胞外微粒子である。核酸やタンパク質などを含有し、様々な疾患の病態形成に関わっている。脂質二重膜に囲まれ、体液中に安定して存在していることより、臨床現場ではバイオマーカーとしての応用が期待されている。Exosomeとその内包物は安定に保護されていることより、法医解剖で扱う死後の体液中にも安定に存在している可能性がある。安定な環境条件下では、法医学分野においても、死体体液中Exosomeの内包物の解析により、死亡に至る病態変化を得られる可能性がある。特にExosomeに内包されている非コードRNAであるマイクロRNA (miRNA)は、標的とする複数のmRNAの調整に関わることより、Exosomeの機能に重要である。しかし、死後経過による体液中Exosome及びその内包物であるmiRNAの安定性に関する報告はない。 そこで本年度は、①体液中のExosome及びその内包物は、どのくらいの期間、どのような環境温度で安定に存在するか、②死体体液中のExosome内 miRNAの解析により、生体で既に報告されている疾患特異的なExosome中miRNAの変化が認められるか、2つの課題について①を中心に検討を行った。最初に、法医学解剖時に採取可能であり、法医剖検において最も重要な体液の1つである血液を対象として実験を行った。血液はExosomeを多く含有していることも知られている。血液から血清を採取し、安定性を調べた結果、血清中Exosomeは、30℃保存では死後1日間、20℃及び4℃保存では数日間、体液中に安定して存在している可能性が示唆された。そこで次段階として、実際の解剖時に採取した血液の血清試料を用いて、疾患特異的なExosome中miRNAの変化が認められるか、現在実験を進めている状態である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は本研究課題の2021年度の計画通り、研究を実施した。血清中Exosomeの環境温度依存的な経日的変化を調べた。ヒト血清をチューブに分注し、4, 20, 又は30℃で、0~3日間静置した。血清中のExosomeを市販の抽出キットと超遠心法を用いて分離後、Exosome膜タンパク質量(CD9, CD63)をWestern blottingにて、Exosome含有miRNAの安定性は内在性hsa-miR-16を定量的RT-PCRで調べた。形態的な変化は透過型電子顕微鏡(TEM)、粒径分布は動的光散乱法を用いて調べた。各群のCD9及びCD63のタンパク質量を0日(コントロール)と比較した結果、4℃では3日目まで変化なかったが、20℃では3日目に減少し、30℃では2日目から経日的な減少が観察された。miR-16発現量は、3日間4℃20℃保存ではコントロールと比較し変化なかったが、30℃保存により減少が認められた。TEMによる観察では、3日目までいずれの保存温度においてもExosomeが観察された。粒径分布測定の結果、コントロール及び4℃保存では、主に直径50-100 nmの粒子が多く存在していたが、20℃及び30℃保存では、さらに微小の粒子が増加する傾向があった。以上の結果より、Exosomeは、30℃保存では死後1日間、20℃及び4℃保存では数日間、体液中に安定して存在している可能性が示唆された。現在は実際に法医解剖時に採取した試料で検討を行っている。研究はおおむね順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
血清中のExosome及びその内包物であるmiRNAの安定性を調べた実験結果より、それらは、採取後数日間は血清中に安定して存在している可能性が示唆された。実際の解剖試料への適用が可能であると考えられる。そこで次段階として、実際の解剖時に採取した血清試料を用いて、疾患特異的なExosome中miRNAの変化が認められるか、現在実験を進めている状態である。今後は現在進行中の解析をより詳細に行うとともに、法医学で死因として重要な疾患を選び、疾患特異的Exosome中miRNAの変化との関連性の検証、及び死因特異的Exosome中miRNAの探索及び剖検試料を用いた実証を行う。血清以外の剖検試料についても検討を行っている。
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