2022 Fiscal Year Research-status Report
スズラン毒(convallatoxin)の凝固機能に及ぼす影響
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21K10528
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
粕田 承吾 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (70434941)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
勇井 克也 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (50783875)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 組織因子 / 単球 / スズラン毒 / コンバラトキシン |
Outline of Annual Research Achievements |
スズラン毒convallatoxin (CTN)が単球において(tissue factor ; TF)産生を誘導するという仮説のもとに実験を行っている。ヒト血液中のTFの主要な産生細胞は単球と考えられることから、ヒト単球系のcell lineであるTHP-1細胞を使用してCTXの単球に及ぼす影響を検討した。 ヒト全血にCTNを投与し、4時間インキュベートしたのちにrotational thrombometry (ROTEM)にて全血の凝固時間を測定した。その結果、clotting time (CT)およびclot formation time (CFT)の和(CT+CFT)の短縮が確認され、CNTは全血の凝固時間を短縮させることが明らかとなった。また、同様にCTN添加後インキュベートした全血から血漿を分離し、凝固亢進の指標であるthrombin-antithrombin complex (TAT)をELISA法で測定した。その結果、CTNの投与によりTAT産生が増大し、CTNによりトロンビン産生が亢進する、すなわち凝固全体の過程が亢進することが示された。これらのことは昨年までに示したCNTによる単球からのTF産生が関与しているものと考えられた。また、THP-1におけるTFのmRNA産生をリアルタイムPCRで評価したところ、CTXによりmRNA産生が増大していたが、これはMEK阻害剤であるPD98059の添加により阻害されることが見いだされた。以上のことと昨年までの結果を踏まえ、Blood Coagulation and Fibrynolysisへ投稿し、受理された。 また、現在血小板凝集に対するCNTの作用について検討を開始しており、CNTの前処理によって、血小板のADP凝集が亢進することを見出している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年までの結果と本年の結果をまとめ、論文として発表することができたという点で、おおむね順調な進捗と考える。しかし、論文投稿の準備に多くの時間をとられたこともあり、新たな進捗はあまり得られなかった。動物実験に関しては、明らかな成果を得られず、当初の計画以上の進捗とは言えない。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究結果で二次止血(すなわち凝固因子)に対するCNTの影響は明らかにすることができたと考えている。今後は、一次止血(すなわち血小板凝集)に対するCNTの効果を検討したい。予備的な検討で、CNTの前処置により、血小板のADP凝集が亢進することを見出している。CNTによる血小板凝集増大作用の確認と、その機序の解明に注力したいと考えている。 また、neutrophil extracellular traps (NETs)に対する影響の検討も未完であり、好中球にCNTを作用させることによってNETsの放出がどのようになるのか、またその機序について解明していきたい。
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Causes of Carryover |
論文投稿の準備に多くの時間を割いたため、実際の実験に充てられる時間が少なく、結果として次年度に回る助成金が多くなってしまった。 次年度の計画として、血小板凝集測定用の試薬、好中球抽出用の試薬などを中心に、各種の消耗品の購入に充てる予定である。
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Research Products
(2 results)