2022 Fiscal Year Research-status Report
Development of a screening method for toxic substances by a miniaturized toroidal ion trap mass spectrometer
Project/Area Number |
21K10530
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
井上 博之 国際医療福祉大学, 医学部, 教授 (40159992)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢島 大介 国際医療福祉大学, 医学部, 教授 (60451754)
岡馬 恵介 国際医療福祉大学, 医学部, 助手 (80844240)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 社会医学 / 法中毒学 / 質量分析 / スクリーニング / 薬毒物 / アルコール |
Outline of Annual Research Achievements |
携帯型GC-MSを用いた血中・尿中アルコール類の測定: 【方法】本携帯型GC-MS(TORION T-9, Perkin Elmer)は、微極性GCカラム(MTX-5)およびトロイダル型イオントラップMS(電子イオン化)を搭載しており、重量14.6 kgである。20 mL容ヘッドスペースバイアルに測定試料0.1 mLおよび内部標準(イソブチルアルコール)水溶液0.1 mLを分注し、塩析剤(塩化ナトリウム、炭酸カリウム水溶液など)を添加して密栓した。バイアルを一定時間加温後、固相マイクロ抽出(SPME, DVB/PDMS)ファイバーをヘッドスペースに曝露して対象物質(エタノール、1-プロパノール、アセトン)を吸着させ、装置に導入した。 【結果と考察】SPMEファイバーによる対象物質の抽出条件を最適化し、バイアル加温温度40℃、曝露時間2分に設定した。各種塩析剤によるピーク面積の増大化を試みたところ、塩化ナトリウム0.1 gを添加することによりエタノールのピーク面積は約2.5倍となった。4物質は0.5分以内にTIC上で分離され、マススペクトルによる同定が可能であった。エタノール0.1~0.4 mg/mL、1-プロパノールおよびアセトンについては0.02~0.8 mg/mLの範囲で良好な直線性を示した。エタノール0.25~3.5 mg/mL添加血液の定量分析における日内変動(n = 4)は精度4~6%、真度104~112%、日間変動(n = 4)は精度5~10%、真度94~105%であった。本法およびヘッドスペースGC-FIDを用いて実試料を定量検査したところ、両法から得られた定量値の相関はエタノールr = 0.978、1-プロパノールr = 0.970、アセトンr = 0.962であり、概ね満足する結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度の研究開始時期の遅れを次年度取り戻すまでに至っていない。アルコール測定において、感度向上を目的として各種塩析剤を添加する実験を行い、飽和炭酸カリウム水溶液が最も効果的であった。ところが、実試料の測定中に不明の夾雑物による妨害の影響が無視できないことが判明した。そこで、追加検証を行い、飽和炭酸カリウム水溶液の替わりに塩化ナトリウム結晶を添加する前処理法に変更し、夾雑物の出現を抑えることができた。本年に入り、揮発性化合物(トルエン、ベンゼン、キシレンなどの芳香族炭化水素やペンタン、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素)の測定条件の最適化を開始したところである。
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Strategy for Future Research Activity |
血中・尿中アルコール類の測定については、今後、実験室外での運用を想定したシステムを構築し、社会実装したいと考えている。すなわち、試料を入れたバイアルの加熱に用いたアルミブロックヒーターに替わるもの、たとえば炭酸カリウムの溶解熱を利用する方法などを考案する。 また、トルエン、ベンゼンなどの揮発性化合物への適用性を評価し、実試料を用いた検証を行う。さらに、血中・尿中の違法薬物(覚醒剤、麻薬など)検知への応用可能性について評価する。これらを総合し、携帯型GC-MSを用いた揮発性薬毒物の迅速検査法としての有用性を確立する計画である。
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Causes of Carryover |
学術集会への参加がコロナ禍でweb開催となったものがあり、出張費を支出する機会が減った。アルコール類の測定条件の最適化に時間を要したため、新しい対象化合物の購入時期を遅らせた。 次年度においては、試薬および測定に必要な実験器具類(ヘッドスペースバイアル、標準品保存用バイアル瓶等)を積極的に購入する予定である。
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Research Products
(3 results)